手の中にある2つのマフラーを見つめながら、俺は少し考えて。
赤のマフラーを土方の方へ放る。
土方がそれをキャッチして、少し不安そうに俺を見た。
「…赤は気に食わなかったか?」
俺は首を横に振る。
つーか、その顔…可愛い……、じゃなくて!
「せっかく2つあるからさ、お前はそっち持ってて。これからの季節、お前もマフラー必要だろ?」
色違いでお揃い、なんて。
すっげぇ仲いいみてぇ。
なんて、言えやしないけど。こんなこと言って拒否られたら、立ち直れなさそうだし。
土方がいつも着る着流しの色に似た藍色のマフラーは、俺ので。
俺の目の色に似た赤色のマフラーは、土方に。
赤色のマフラーはお前に持ってて欲しいんだ。
「土方、誕生日いつ?」
「は?」
話がいきなり飛んで、土方は目をぱちくりとさせる。こうして時折見せてくれる幼い表情が、可愛いなあって思う。
「俺、の誕生日は……お前の半分だ」
「半分?」
えっと…、俺の誕生日が10月10日だから…。
「5月5日…とか?」
こくっと頷く土方は、それでも何でそんなこと聞くんだ?、と怪訝そうに俺を見る。
「んじゃあ、これかなり遅くなっちまったけど。誕生日プレゼントな」
「…はぁ?おい、これ俺が買ったつーの」
ごもっとも。
「マフラーは好きにしろ、ってお前言ったろ?俺はお前にやりてぇの。来年の誕生日にはちゃんとやるからさ。俺の…愛とか?」
「…いらねーし」
「銀さんの愛はレアだよ?もらって損ないよ〜」
「んなこと言って、金かけないようにしてるの見え見えじゃねぇか」
「バレた?」
俺がべーと舌を見せてやれば、呆れたように笑う土方。
(ま、愛をやりたいってのは本気なんだけどね…)
来年の5月5日は本当に愛をあげれる関係になりたいと願いつつ。
俺は杯を重ねた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その日、土方は日付が変わる前に私宅に帰った。送っていこうか、って言ってみたけど。必要ない、って言われちまった。(心配なのに)
「ありがとう、な」
ともう一度礼を言えば。
「こっちこそ、ありがとう、よ」
と返される。
土方は赤色のマフラーをふわりと巻いて、「あったけぇ」と笑った。
とくん、と鳴る胸。そのまま抱き寄せてしまおうかとも思ったけど。
…まだ、土方に気持ちを伝える勇気はなかった。いや、ほんと。今土方に嫌われたら、俺万事屋の2階から飛べる。
そのマフラーみたく。
俺も土方を包んでみたいよ。
…うわ、自分で言っててクサすぎ。
土方の後ろ姿を見送りながら、俺はそんでも幸せな思いだった。
少なくても土方は俺を好いてはくれている。俺が土方に抱いている気持ちとは違うだろうけど、さ。
だから、いつかちゃんと伝えよう。土方が好きで好きで仕方ないって。
…俺の傍にいてほしいって。
けど。
俺は、最近あまりに土方が近くに感じられて。
忘れていたんだ。
土方に愛をあげられる立場になるためには、乗り越えないといけない障害があるってことを………。
嵐は、すぐそこまで迫っていた。
続