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「10月10日は銀さんの誕生日なんですよ!」

「私、銀ちゃんにめっさ喜んでもらいたいネ!そしたらトシちゃんしか思いつかなかったアル」

「?なんで、俺?」

「だって、銀ちゃん、トシちゃんのこと「わーーーっ!あ、あれです、まともに相談にのってくれるのって土方さんしか思い浮かばなくて!」


いきなり大声をあげたメガネに吃驚しつつ、俺は先を促した。



「で?相談ってのは?」

「えっと…。銀さん、土方さんの料理すっごく気に入ってるので…。銀さんの誕生日に是非腕を振るって欲しいんです」

「私たち、あんま給料もらえないけど貯めた分全部トシちゃんにあげるヨ。これで銀ちゃんにご飯作ってあげて欲しいネ」


そう言って神楽は豚の貯金箱を差し出してくる。俺は交互に二人の顔を見た。二人とも真剣な顔をしてて、その思いの強さが伝わってくるようだった。



万事屋は普段ちゃらんぽらんだが、閉めるとこは閉める男だ(と俺は思ってる)。こいつらは万事屋のことを本当にわかってるんだろうし、慕ってるんだろう…。
その慕ってる人間を喜ばせるってのに俺を選んだのなら、俺はその思いに応えたい。


それはひどく、名誉なことだ。



「その貴重な小遣いを俺の料理にだけに使うのは勿体ねぇな。
その年の誕生日は二度と来ないぜ?なんか形に残るものでも買ってやれよ」

「え?だって…」

「料理は俺からあいつへの誕生日プレゼントだ。お前らはお前らでなんか買う。これならいいだろ?」


呆然としている二人に、俺は笑ってやった。
二人は俺を挟んで顔を見合わせたあと、ぱあっと顔を輝かせて
「「トシちゃん(土方さん)!大好き!!」」
と抱きついてきた。



俺は平等に二人の頭を撫でてやりながら、胸がぽかぽかとあったかくなるのを感じた。
こいつらに免じて、総悟は無罪放免にしてやろう。…今回だけな。






その後。
綿密に明日の計画を練る。
せっかくだからサプライズにしよう、と、どうやらこいつらはいろいろ考えていたらしい。


明日、万事屋は一人で仕事らしく、夕方まで帰らないらしい。
それまでに俺は万事屋のとこの台所で料理を作り、二人は俺を手伝ったり飾り付けしたりする。
料理のメニューや買いだしの内容などを決めて、俺たちはその足で大江戸デパートに向かった。


************


「じゃあ、このクラッカーとか色紙とかは私の押入れに隠しとくアル」

「食材はさすがに隠せないだろうから、こっちは僕が持っとくよ」

買い物を終えて、その荷物分担も決まった。
俺はケーキの材料だけ持っていた。万事屋のところにオーブンがないから、ケーキは俺のうちで焼くことにしたんだ。


メガネがすまなそうに頭を下げる。

「すみません…。結局ほとんどお金を出してもらって…」

俺は気にするな、とメガネの肩を叩く。


「お前らはまだガキなんだからよ。自分の年より上の人間に頼っていいんだぜ。
それに、お前らはお前らで、俺にはできねぇことやれるんだからな」

「トシちゃんにできないこと…アルか?」

「あぁ。俺だったらいくら慕ってる人間でも、こんなに全身全霊かけて誕生日を祝おうとしないな」


お前ら、ほんと、いい子だよ



10代も半ばのこいつらにかける言葉じゃないかもしれない。
けど、思ったことを素直に伝えた。
こいつらに慕われてる銀時は本当幸せ者だと思うんだよ。



顔を真っ赤にした二人の頭を同時に両の手でわしわしと撫でて、

「また、明日な」

とデパートをあとにした。






デパートを出てきたものの、俺はふと料理だけでいいのか、と思った。
せっかくだから何かやるか…。あいつらに言ったこともあるし、形に残るものをやりたいと思った。


と、何気なく横を見てそのショーウィンドウの中にあった物に。
俺は小さく「あ」と呟いて、その店の中へ吸い込まれるように入って、店員を呼んだ。



「あの飾ってあるやつ、見せてもらえるか?」








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