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帰り道。
トシちゃんと手を繋いで私は歩く。銀ちゃんと新八は後ろだ。
夕焼け色を体いっぱいに浴びて、そっと隣を見ると、トシちゃんが私の視線に気付く。
夕日に照らされてトシちゃんの白い肌は鮮やかな紅に染まっている。
その綺麗に彩られたトシちゃんが、ふわっと、ほんとにそんな表現が合う優しい優しい笑顔を見せてくれて。
私も嬉しくなって、にっこり笑う。
私は、トシちゃんに聞こうと思ってたことを口にした。
「トシちゃんは、私のこと好きアルか?」
「な、なんだよ…いきなり」
「私はトシちゃんのこと大好きヨ!」
「……あ、ありがと…」
明らかに夕日の所為だけじゃない赤が、トシちゃんの頬を染める。
続けて私はトシちゃんに質問する。
「じゃあ、トシちゃんは銀ちゃんのこと好きアルか?」
「ぶほぉぉぉおおお!!??」
後ろからすごい水音がして、銀ちゃんが飲んでた苺ミルクを吐いたことがわかった。
無視して、私は固まってるトシちゃんにまた話しかける。
「銀ちゃんはトシちゃんのこと好きヨ。トシちゃんはどう、もがっ」
「ひ、ひひひひ土方くん!い、今のはナシ!なんかもうナシ!!」
何するネ、銀ちゃん!!せっかく私が人肌脱いでやってんのに!!
きっぱり言わない銀ちゃんが悪いのヨ。それに、トシちゃんの気持ち聞くチャンスなのに!
銀ちゃんに口を抑えられて、もがもがってしか言えない。もう!
私は銀ちゃんの手を力任せにどかす。力技だったら私のほうが強いネ!
「何するアルか。私、トシちゃんに聞いてるアルよ。銀ちゃんは黙って聞いてるヨロシ」
「いや、これは聞いてられないだろ!邪魔します!全力で邪魔させてもらいます!!」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ私たち。
銀ちゃんが後ろから羽交い絞めにしてきたから、私はそれを払って逆エビ固めをくらわす。
「ぐぎぎぎ…。…ぎ、ぎぶぎぶぎぶ……」
ばんばんと銀ちゃんが地面を叩いて限界を訴えてる。
私は面白くなっちゃって、そのままやり続ける。神楽ちゃん、やめて!と叫ぶ新八の声も聞こえてくるけど、やめない。
「それくらいにしとけよ」
トシちゃんの声が聞こえた。声のするほうを見れば、少し困ったようなトシちゃんの顔があった。
「…トシちゃん」
嫌われたアルか…?こんな乱暴な子、って思われただろうか。
そう思うと悲しくなって、銀ちゃんを離して、トシちゃんの身体に抱きついた。トシちゃんの胸に頭をぐいっと押し付けて、いやいやをするように頭を横に動かす。
ぎゅうっとトシちゃんの着流しを掴んでいると、トシちゃんの手が私の頭を撫でてくれた。安心したからか、もっと強くトシちゃんにしがみつく私。
トシちゃんは私の頭を撫でながら、ゆっくりと話し出した。
「……嫌いじゃねぇよ………」
え?
がばっ、とすごい勢いでトシちゃんを見上げる。
やっぱり、夕日の紅だけじゃない赤がトシちゃんの頬を染めてて。
「……嫌いだったらな、飯作ってやったり、一緒に動物園に行ったりしねぇよ」
そう言って、ふんわり、ちょっと恥ずかしそうに笑ってくれた。
…聞きたいことはもうちょっと違ってたんだけど。
綺麗で可愛い顔がいっぱい見れたから、今日はこのくらいにしとくアル。これ以上トシちゃんの可愛いところ見たら………銀ちゃんの心臓が破裂すると思うネ。
ほら、今も顔真っ赤にしてヘタレ込んでる。
「トシちゃん、おなか空いた!」
「ほんっと、よく食べるよなお前は」
くしゃ、っとちょっとだけ乱暴に私の頭を撫でてから、スーパー寄ろうぜ、とトシちゃんは歩き出した。
あ、ここはちゃんとお金だしますから!とトシちゃんを追いかけてきた新八の頭も、トシちゃんはくしゃっと撫でた。そうだな、さすがにそうしてくれると助かるぜ、とか言いながら。その優しい笑顔に新八も顔を真っ赤にしてこくこく頷いてる。
私はトシちゃんの手をぎゅ、と握った。
その手をトシちゃんは優しく握り返してくれる。
反対側を見れば、新八も真っ赤な顔でトシちゃんと手を繋いでる。
「…なんか、妹とか弟ができたみてぇ」
嬉しそうに笑うトシちゃんに、私と新八も笑った。
(妹、より。トシちゃんの子どもがいいナ)
こっそりそんなことを思いながら、私たちはスーパーまで仲良く手を繋いで歩いた。
ヘタレ込んでた銀ちゃんはというと、そのあと大慌てで私たちを追いかけてきて。トシちゃんの両手が私たちにとられていることにほんとにがっくりしてた。
可哀想な気も、ちょっとだけした。
銀ちゃん、頑張ってね。
トシちゃんが誰かにとられちゃう前に、早くトシちゃんをつかまえるアルよ!
グダグダしてたら、また私が銀ちゃんのために人肌脱いであげるネ!!
でも、今日は。
私がトシちゃんにべったりしたいネ。
ごめんね、銀ちゃん。
END