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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「きゃほーー!早く早く!早くこっち来るネ!」

「もう、神楽ちゃん!そんなに急がなくても動物園は逃げないよ」

だって嬉しいんだもん!体がわくわくして全然落ち着かないネ!


午前中だというのに日差しはとても強い。私は傘をしっかりと握りしめて入場と同時に走り出した。
面白いものがいっぱいあって、とっても楽しい!




「トシちゃん、一緒にまわるアル!」

「お、わ!こら、チャイナ、あんまり引っ張るなって!」

「あ」

それまでトシちゃんの隣を歩いていた銀ちゃんがちょっと残念そうな声をあげたけど、私はトシちゃんにくっついていたくて聞こえない振りをした。
アレよ、女の子はマミーと一緒にいたいものネ。パピーは大抵女の子とマミーとの間には入れないものヨ。
動物園だけはトシちゃんを独り占めしたくて。私はトシちゃんの手を引いて、あちこち見回った。



「あれとか、可愛いな」

「あっち、親子アルよ。赤ちゃん可愛いネ」

「あ、ほんとだ」

トシちゃんはすっごく柔らかく笑う。私はちょっと見惚れた。
ほんとに綺麗な人。優しくて綺麗で、料理も上手でしっかりしてて、なのにすっごく鈍感で…。
いいなぁトシちゃん…。マミーにならないかな……。銀ちゃんのこと好きになって、結婚しないかなぁ。
私、すごく祝福するのに。






「?チャイナ?どした?」

「!んーん!何でもないネ。ねートシちゃん、おなか空いたヨ。ご飯にしよ!」

「あ、そっかそんな時間か」



私たちは高台にある休憩所へ上った。
気持ちのよい風が吹き抜ける。銀ちゃんが外の芝生にシートを引いて、その上にトシちゃんがお弁当を広げる。

「ちっと作りすぎちまった…。作ってるうちに楽しくなっちまってよ」

弱冠頬を赤らめてそう告げるトシちゃんに、銀ちゃんがぼーっとなってる。私は銀ちゃんを肘でつついて、正気に戻らせてやった。

「…これ、全部土方さんが作ったんですか…?」

「あぁ、まぁな」

「……すごい…」

お弁当はほんとに豪華だった。
お稲荷さんと海苔を巻いた俵型のおむすび、鶏のからあげに玉子焼き、ちくわにチーズと胡瓜を詰めたもの、ミートボール、かぼちゃの煮つけ、切干大根、きんぴらごぼう、胡瓜の浅漬け、サニーレタスにハムと胡瓜と人参をまるめたもの、ミニトマト。
彩り鮮やかに盛られたお弁当は、本当に美味しそうだった。


「食べていいアルか!?」

「あ、待て!まず手を拭いてからだ。万事屋、そこのバックの中からウェットティッシュとってくれ」

「え?あ、えっと……、これ?」


…なんか会話が家族みたいネ!



トシちゃんの料理は当たり前だけどものすごく美味しかったネ。
新八は初めて食べたからえらく感動してた。泣きながら食べてたヨ。

「僕、こんな美味しいご飯初めて食べました!生きててよかった…!」

「おいおい…大げさだな」

「土方さん!僕に料理教えてください!僕いっつも味を濃くしちゃって…」

「クス…。いいぜ。非番のとき限定になると思うが、それでよけりゃあな」

「ほんとですか!?ありがとございます!!」


新八はずっと姉御の料理を食べてきたアルしな。喜びもひとしおネ。



トシちゃんはそのお弁当のおかずに更にマヨネーズかけてたネ。…そんなことしたらせっかくの料理が勿体ないと思った。銀ちゃんが小豆をかけるのとおんなじネ。
変なところがそっくりだけど、表面的には違う2人。結婚したらなんか喧嘩しそうアル。



銀ちゃんは静かに食べつつ、ときたまトシちゃんのほうを見てヘラリと笑ってる。
見てるこっちが恥ずかしい…。…もう、じれったいネ……。
好きなら好きってはっきり言えばいいのに。トシちゃんは優しいから、真剣に伝えればきっと真剣に聞いてくれる。
というか、トシちゃんの場合ちゃんと言葉で言わないと伝わらないヨ。ほんと鈍感なんだから。


ここは、歌舞伎町の女王の私が人肌脱ぐしかないアルな!!
そう私は決意した。


だって、早くトシちゃんにマミーになって欲しいんだもん!





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