B




「…ひ、土方…」

「?」

再び、万事屋が話しかけてくる。俺は何だろうと思い、もう一度万事屋の顔を見つめた。万事屋はこの暑さのせいか少し頬が赤い。
俺はますます不思議に思って万事屋を見つめてると。



「…っ、土方っ!俺…「トシちゃん、一緒にまわるアル!」

「お、わ!」

横から飛び込んできたチャイナが、俺の右腕に飛びついてきた。そのまま俺はチャイナに引っ張られる。

「こら、チャイナ、あんまり引っ張るなって!」

「あ」


言いかけで終わってしまった万事屋が少し気にかかったが、チャイナの馬鹿力に引っ張られて俺はチャイナと行動を共にすることになった。言わなきゃならねぇ大事なことなら必ず次の機会に話すだろう。万事屋には悪いが、今回はチャイナの我が儘にとことん付き合ってやりたいという思いが俺の中で大きかった。




昨日の、寂しそうなチャイナの顔。
遊びたい盛りで…本当はまだ甘えたい年頃。
今日くらい、精一杯甘やかしてやりてぇ。



悪い、万事屋。







それから、俺たちは動物園を満喫した。
赤ん坊ラッシュの宣伝の通り、生まれたばかりの赤ん坊の動物がいろいろ居て。チャイナが目をキラキラさせながら動物たちを見ていて。俺も、動物の愛らしさにすっかりやられてた。



そのあと、チャイナに促され昼食をとることにした。高台にある休憩所へ上り、弁当を広げて、昼食にした。

その昼食の場は、さながら早食い競争だ。
そんなに少ない量ではなくて…寧ろ8人前はゆうにあるだろうという量を、4人でぺろりと平らげる。…ぶっちゃけ、その大半はチャイナだ。


すげぇな…。圧巻だ。



チャイナが宇宙人だと知っていても見た目は15歳の少女なのだから、その光景が不可思議でならない。あの細い身体の何処にあんな大量の食物が消えていくんだろう?




眼鏡は俺の弁当にえらく感動してて、「僕に料理を教えてください!」と頼みこんできた。俺はその熱血加減が気に入って、非番の日なら教えてやると約束した。ここまで手放しで喜んでもらえると、照れくさいが悪い気はしねぇな。



万事屋はというと、前みてぇに黙々と食べている(ま、おかず奪い合い戦争勃発中だからしゃべる暇もねぇのかもしれねぇけど)。けどたまに目が合って、そんときはすんげぇへらっと笑うから、あぁ不味くはねぇのかな、って安心した。俺もつられて笑っちまってたと思う。






なんだろうな…。こいつらは別に真選組の仲間とかじゃねぇし、幕臣の連中とかでもない。
けれど、どうしてここはこんなに居心地がいいんだろう。
妹とか弟みてぇなチャイナと眼鏡。そして、どこか俺と似ていて、少しだけ俺より大人な万事屋。
なぜか、こいつらの傍にいると落ち着くんだ。



仕事から離れるからかもしれない。
チャイナや眼鏡が自分に懐いてくれているからかもしれない。
万事屋が気兼ねなく俺と言い合いしたり、けどたまにお互いを支えあったりするからかもしれない。



…理由なんざ、なんでもいいか。
俺は、きっと。こいつらのこと………なんだろう。
その事実さえ俺が自覚してりゃあ、十分だろう。




真選組以外にそんな場所が見つかるなんて、思わなかった。





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