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でも、土方が俺の笑い顔に合わせて笑ったのを見て、あぁ嫌われてはいないなぁと嬉しくなった。
更に俺は、土方に話しかける。あいつらの言伝を伝えてやらねぇとな。


「あ、あのさ。また飯とか作ってくれない?神楽がお前の料理すっごい気に入っててさ。新八も食べてみたいって言ってたし」

「眼鏡も?…そうか。生憎非番の日がなかなかつくれなくてな…」

申し訳なさそうに、それでも嬉しそうに土方は笑う。
俺は続けた。

「お、俺も…またお前が作ったオムレツ食いたいし…」

「!…そ、そうか……」

土方は完全に照れたように俯いて、誤魔化すように短くなった煙草を携帯灰皿に捨てた。



なんか…、土方。
マジでかわいいんですけど…。
どうしよう。久々に土方に会ったもんだから、俺の心拍数は上がりっぱなしで。
……土方がかわいくて愛しくて、どうしようもない。


土方は非番がいつになるかわからないが、また作りに行ってやるよ、と約束してくれた。
いつでも待ってるよ、と言って、俺は笑った。



俺は土方と別れがたくて、再度質問する。

「で、今日は一人で見廻り?」

「……いや、近藤さんと一緒だったんだが、……お妙を発見したらしく、」

「あ〜…。殴られに行っちゃったんだ」

「…そういう言い方をするな」

頑張るなぁ、あのゴリラ。絶対一縷の望みもないってのにどこまででも突っ走れる近藤を、俺は羨ましく思った。


「……多串くんは?休憩とかしないの?」

「あ?…見廻り始めてまだ1時間しか経ってないんだ。休憩なんかまだできない」

「ゴリラを待ってるんじゃないの?」

「ゴリラじゃない!きっとしばらくは帰ってこないだろうから、俺一人だけで見廻ろうと思ってたんだよ」


俺は考える。ひょっとしなくても、もう少し土方と居れるチャンスなんじゃないか?
俺は駄目もとで土方に話しかけた。


「この間のお詫びにコーヒーくらい奢るよ…?ちょっと休憩しない?」

土方が驚いたように目を見開いた。え?そんなに驚くところ?
俺がどきどきしながら土方の返事を待っていると、こんな答えが返ってきた。


「……お前、人に奢る以前に、ガキ共にちゃんと飯食わせてやってるんだろうな?チャイナが『いつも腹減ってる』って嘆いてたぞ?」

俺への詫び以前に従業員の給料の方が大切だろ?特に、成長期の子どもにはきちんと飯を食わせてやらねぇとしっかりとした体にならねぇじゃねぇか。


…驚いた。まさか、子どもたちの心配をされるとは思わなかったよ。
なんかこれって…土方があいつらの“母親”みたいじゃね?
あれ?そうすると、“父親”は俺?ってことは、俺ら“夫婦”じゃん!


俺はものすごい嬉しくなって「大丈夫!ちゃんと食わせてやってるから!」と言った。
土方は不思議そうな顔をしてたけど、俺は気にならなかった。

もう自分の妄想の世界にどっぷりだったからね!やっぱり土方って、言うことやること嫁さんっぽい。
ほんとにいつか、俺の嫁になってくれないかなぁ。大事にするのになぁ。



「休憩、する?」

「……近藤さんが戻るまで、な」

やった!土方とお茶の時間をゲットだぜ!(古)
俺はほんとに嬉しくて、今にもスキップを踏みそうな勢いだった。…実際んなことしなかったけどな。

俺たちはそのまま近くの喫茶店へ行こうと歩き出した。俺の心は薔薇色、お花畑って感じだったんだ。



この時までは。






と。
いきなり隣にいた土方が視界から消える。
俺が驚いて振り返ると、そこには。

土方の肩のへんを後ろから片腕で捕らえている、
ゴリラ…もとい、近藤の姿があった。


「こ、んどうさん?」

「ごめんな、トシ。見廻り再開しようか?」


土方も驚いてる。近藤の顔、なんだかいつもと違うな。
笑ってるんだけど、目の奥が笑っていない。俺を冷たく見据えてる気がする。

つーか、そんなことより何より、その格好はなんなんだ?
いくら仲がいいからって、後ろから抱き付いてるような感じじゃねぇか。
…おかしくないか?



俺はムッとして、ひとまず近藤に抗議してやった。

「ちょっと、ゴリラ。お前今まで仕事ほったらかしでお妙にストーカー行為してきたんだろ?多串くんにも休憩あげないと不公平じゃねぇの?」

近藤も負けじと返してくる。

「早く見廻り終わらせないと、次の仕事に間に合わないんだよ。銀時、俺がお妙さんとラブラブだからって妬いて八つ当たりするなよ」
な、なんだその見当違いな台詞!?

「何適当なこと言ってんだよ。あのゴリラ女とゴリラが仲いいからってなんで俺が妬く必要あるのよ?っていうか、お前等全然仲良くないだろ?」

土方に誤解されたらどうすんだよぉーーーーっ!!


「お妙さんをゴリラ女呼ばわり!?酷い男だな!トシ、こんな男放っておいて見廻りに戻ろう」

俺のことなど眼中にないと言わんばかりの近藤の台詞に苛々は募る一方。
っていうか、いい加減てめぇ土方から離れろよ。
近藤がお妙にぞっこんだって知ってても、土方が他の人間とくっついている光景はあんまり見たくないんだけどっ!


「…どうでもいいけどよ。何で土方の肩に腕を回したまんまなの?暑苦しそうだから離してやれよ」

「トシは別に嫌がってないよ?昔、初めて会った頃からこうしてやると嬉しそうだったよ。なぁ?トシ?」

「え?…まぁ…。落ち着くしな」


うそ。
お前等、昔からそんなことしてたのか?
…え?お前等ただの上司と部下、親友同士の関係だよな?


更に近藤は話を続ける。

「この間のトシの誕生日のときも、こんな感じで寄り添って一緒に酒飲んだよな。美味かったなぁ、あの酒。結構度数高かったから、トシってばすぐに顔を真っ赤にしてたよな」

「…近藤さんだって真っ赤だったじゃねぇか」


土方の、誕生日?
…知らない。そんなの、俺は知らない…。
近藤と土方の絆の深さを見せ付けられた気がして、俺は途方にくれてしまった。
今までの楽しい気分は一気に霧散する。

土方の赤い顔が信じられなくて、俺は自分の顔が青醒めていくのがわかった。



そんな中、急に土方は近藤の腕を抜け出して、「そ〜〜〜〜〜ご〜〜〜〜〜!!!」と叫びながらすごいスピードで走っていってしまった。


そして、土方が居なくなった途端、近藤の雰囲気が一気に変わった。
さっきまでもちらちらとちらついていたが…、でも今まで見てきた近藤とはまるで別人だ。





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