「うまいアル!これ、マジうまいネ!サイコーネっ!」
地球にきて、1番うまいご飯だった。ニコチンプロ並みアル!プロってどんな感じかわからないけど、それっぽいネっ!!
ほんと夢中で食べまくってたアル。けど、ニコチンが全然食べてないことに気付いた。
私は一緒にご飯を食べたくて、ニコチンに話しかけようとした。
でも、ふと、“ニコチン”という呼び方が気に入らなくなった。
この男の名前を思い出そうとして、考えて。やっとあのゴリラが『トシ』と呼んでいたのを思い出した。
「トシちゃんは食べないアルか?」
「は?………いや、お前、その呼び方はちょっと……」
「こう呼びたいアル……どうしてもダメアルか?」
「う…」
結局トシちゃんは『トシちゃん』という呼び方も許してくれたし、一緒にご飯も食べてくれた。
トシちゃん、案外押しに弱いのかもしれない。
私はそんな一面が覗けたのも嬉しくて仕方なかった。
私は最後におむれつに手を付けた。
こんなにおいしい卵の食べ方があったなんて!
1番おいしい卵の食べ方は『卵かけご飯』は不動のモノだけど、これは2番目においしいネっ!
私はもう夢中になって食べていた。まだ足りなかったけど心では満足して箸を置こうとしたら、今までずっと静かだった銀ちゃんが騒ぎ始めた。
横を見ると、銀ちゃんはトシちゃんの右手を握り締めてキラキラした目でトシちゃんを見ている。
いつもの銀ちゃんじゃないネ……。
そう思って見ていると、銀ちゃんが発したとは思えないくらい素敵な提案が聞こえてきた。
「俺の……」
「…お、まえの?」
「お嫁さんになってください」
お嫁さん……。
銀ちゃんのお嫁さん……。
じゃあ、トシちゃんは銀ちゃんと結婚して、私のマミーになるってことアルかっ!?
ってことは、ってことは……。
そしたら毎日トシちゃんの手料理食べれるネっ!!
銀ちゃん、今初めて尊敬したアルっ!
銀ちゃんの目、マジアル。
あれは本気でトシちゃんに惚れてるナ。
そのままトシちゃんを口説けるか、私は見守っていたアルが………。
その後が駄目だったアル……。
あのマダオ。こともあろうにトシちゃんを怯えさせたアル。
めっさ腹立った私は、定晴を呼んで銀ちゃんの頭に噛み付かせた。
ぎゃーぎゃー煩い銀ちゃんをきれいに無視して、私はトシちゃんの手を握った。
トシちゃんの手はやっぱり男の人の手だったけど、白くて冷たくて、そこはマミーにそっくりだった。
私はトシちゃんにますますマミーになって欲しくなった。
トシちゃんは綺麗に食器を片付けてくれて、材料費としてお金を置いてくれた。
私はさっきの銀ちゃんの行動をフォローしようと思った。
別に銀ちゃんの為じゃないネ。トシちゃんが銀ちゃんのこと嫌いになってしまうとお嫁さんに来てくれなくなるアル。
そしたらトシちゃん、私のマミーになってくれないヨ。トシちゃんの料理、二度と食べられなくなるネっ!
「トシちゃん。うちのマダオはあんなんだけど、悪い奴じゃないネ。嫌わないであげてヨ…」
「チャイナ…お前はいい子だな」
トシちゃんは私の頭を優しく撫でてくれた。
トシちゃんはさっきの行動を銀ちゃんが酔ってた所為だと思ってるみたいアル……。
トシちゃん、押しに弱いうえに天然アルか?
でも銀ちゃんが嫌われないで済んで、私はホッとした。
「わたしもトシちゃんの料理好きヨ?また作ってほしいネ!」
マダオからは私と定晴が守るから、と言えばなんだか複雑そうな顔をされたネ。
……トシちゃん、全然わかってないアルな……。
今日は朝からいい日ネ!
トシちゃんの料理がおいしくて、
トシちゃんはマミーみたいにしっかりしてて、
それに押しに弱くてお願いを聞いてくれたり、
鈍感で天然。
「トシちゃん、マミーになってくれないかなぁ…」
一向に動く気配のないマダオのことなどすっかり忘れて。
私は酢昆布を噛みながら、そんなことを思った。
END