トシは俺のために銀髪の侍を見つけて決闘を申し込んでくれた。(別に俺がそうしてくれと頼み込んだわけではないぞ!!)
トシはいつでも俺や真選組のことを考えてくれている。だからそんな行動をとってくれたんだ。
そんなトシでも銀髪の侍には勝てなかった。一部始終を俺と総悟は見ていた。
二人が何をしゃべっているかは聞こえなかったが、銀髪の侍はトシを傷付けることなく、トシの刀を折って決闘が終了した。
俺はトシが怪我しなくてほっとしたが、トシが負けたにもかかわらず穏やかな表情をしていた事が気にかかった。あんな負け方をしたのに、一体銀髪の侍に何を言われて納得したのだろう。
なんだか変な気分だった。
「近藤さん」
隣にいた総悟が声をかけてきた。「ん?」と聞き返すと、妙な事を言い出した。
「あの銀髪の侍、なんか長い付き合いになるかもしれやせんね」
「え?なんで?」
「勘でさぁ。なんか……土方さんと気が合いそうですぜィ、あの旦那」
「は?」
「これも勘でさぁ。気にしねぇでくだせぇ」
総悟の勘は当たる。なんとなく変な気分に拍車がかかった。
これから銀髪の侍と関わる機会が増えるのだろうか?
…トシとあいつが、気が合う?
もやもやとした嫌な気分になった。
それからというもの。何かにつけてトシと銀髪の侍・銀時は衝突するようになった。
銀時の方がトシをからかったり、怒らせたりして楽しんでいて、トシの方が負けまいとムキになって頑張ってて、よく銀時相手に怒鳴り散らしていた。
俺の中でもやもやが広がっていく。
このもやもやの正体は最近わかったのだが、……そうだ、嫉妬だ。
子どものようにムキになっていろいろ心置きなくやりあえるトシと銀時の関係に、嫉妬してしまう。俺ではありえないポジションだったからだ。
…別に嫉妬する必要はないのだが…。
それなら俺は、銀時ではありえないことをトシにいろいろできるポジションだ。
局長と副長として肩を並べられるし、長年のつきあいでトシの信頼も獲得してるし、大切にしてもらってる。
なにより…甘えさせてもらって、かわいいトシだって見れる。
なのに、なんでこんなに嫉妬するのか。おかしいだろ?
ある日、俺はいつものようにトシに甘えるために、トシの部屋を訪れたとき、思い切ってトシの気持ちを聞いてみる事にした。
トシを布団に仰向けに寝かせて、俺はその横に寝て、少し上半身をあげて両腕をトシの顔の脇においてトシを見下ろす格好だった。
「最近、銀時とトシ仲いいよな」
「……………はぁ??」
トシは固まり、たっぷり30秒後、間抜けな声をあげた。
「…近藤さん?一体何をどう見たらそう見えるんだ…?わかるように400字以内で答えやがれ」
トシはどす黒い空気を放ちながら俺を睨みあげた。おわっ!怖いぞ?!さすが鬼の副長だな!…じゃなくて、まてまてっ!怒るなよ、トシ!
「だってなぁ、仲良く見えるぞ?トムとジ○リーみたいだ」
「猫と鼠じゃねーか!ありゃ天敵同士で、全然仲良くねーぞ?!歌だけだろ!」
「まるで夫婦漫才に見えるんだ」
「ふざけんなーーっ!何であんな奴と漫才なんか!」
「トシ、突っ込むところそこじゃないぞ」
ぎゃーぎゃー反論するトシ。あぁ、トシはほんとに銀時を敵対視してるんだな、と思ったらほっとして笑っていたらしい。
トシは面白くなかったんだろう、むっと唇をとがらせた。そんな表情がかわいくて、思わず手をトシの頭の上に置き、くしゃりと撫でた。トシは気持ちよさそうに俺は目を細めてる。猫だったらきっと喉がなってただろう。
「トシは、ほんとにかわいいな」
俺はトシのやわらかい唇を自分のそれで塞いだ。啄ばむように軽く。それに焦れたのか、トシは舌を出してきたので、笑いながら舌を出して絡めた。
…トシはほんとにキスが好きだな。唾液を流し込めば当たり前のように受け入れてる。
かわいい、トシ。更に舌を絡めようとして、トシの動きが止まった事に気付く。
…なんだ?俺が目の前にいるのに、考え事か、トシ。