めぐみ 【銀時編】@







あっちぃ…
このあっちぃ中、一生懸命仕事してきたってのに。
この仕打ちはないんじゃない?神楽ちゃん……





その日の仕事は、とある陶芸おやじの焼き物の発注作業だった。
焼き物を壊さねぇように箱に詰めていかなきゃいけなくて、こりゃ俺とか新八とか手先が器用な奴じゃねぇとまずいって話になって。
神楽を置いて、俺と新八の2人で今回の仕事を受けた。


金がなくてきりきりまいだったところに舞い込んだ仕事だったから、これは是が非でも成功させねぇと。
俺にしてはほんと珍しく頑張ったんだよ、マジで。



にもかかわらず。




「…あれ?あれあれあれあれ???」

「?どうしたんですか銀さん?冷蔵庫に頭突っ込んで…。何かお探しですか?」

「………帰ってから食べようと思ってたプリンがないんだけど………」


仕事が終わって帰ってきた俺と新八。むんむんとした部屋で作業してたから汗だくだくの身体を風呂でさっぱりとさせて。俺は楽しみに取っておいたプリンを食べようと意気揚々と冷蔵庫を開けると。
そこにはあの愛らしい姿はどこにも無かった。



…とてつもなく悪い予感がして、俺は俺が土産で買ってきた酢昆布をかじっている神楽に聞いてみる。

「あ。今朝冷蔵庫から『私を食べてv』って声が聞こえたから、私食べてあげたネ」

「はぁぁぁぁああああ!!??」

やっぱり!!この、この小娘〜〜〜〜〜〜!!!



「恩を仇で返されたよ!!何この仕打ち!!俺、今日一生懸命働いてきたんですけどぉぉおお!!??んでもってプリンが喋るわけないだろぉぉぉおおお!!!」

「銀ちゃんの心が汚いから聞こえないアルよ。私、めっさ聞こえたネ」

そんなことを平然と言ってのけるおめぇの心のほうが汚ねぇ―――――っっ!!!!



…その日俺は、不貞腐れて寝た。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



その、翌朝のことだ。


ふと目を開けると、トントントン…というまな板の上で何かを切る音が聞こえてきた。
あれ?新八は普通に昨日帰ったはずだから、家にいるのは神楽のみ…。ってことは神楽が飯作ってんのか?
今朝は俺が当番だったはずだ。
昨日の詫び入れのつもりか…?…意外に可愛いところあんじゃねぇか…。


そんなことしても、俺のプリンは返ってこないけど…。やべ、また泣けてきた…。



そう思いつつ、俺は眠い目を擦り擦り台所に行ってみた。



「あ〜〜〜、神楽〜〜〜?お前、今日は早ぇな…。…それに、今日の飯当番俺じゃない……け……」

そう言いながら俺は台所に入っていって。
神楽と………、もう一人いるのに気付いた。



短髪の綺麗な黒髪、紺の着流しに黒のエプロンしてる俺と同じくらいの背丈の人。
くるりとこちらを振り向いた顔は、綺麗で。
見間違えるはずが無い、俺の………想い人。


ひ、土方……???
何この状況?同棲?この子、いつ俺の恋人になったっけ???
え?俺、いつ告ったっけ?いつ想いが通じ合ったっけ???



彼は、俺をおたまで指しながらこう言ってきた。

「お前なぁ、朝起きたらなんて挨拶するんだよ?お前がそれだからチャイナがちゃんと挨拶しねぇんだぞ?」



…え?お母さん???
あれ、俺って結婚したっけ?この綺麗な子と結婚しちゃったっけ???
新婚ほやほや???ラブラブ?????




俺自身はもはや無意識だったと思うが、おそらく何か反応を返せたのだろう。
目の前の黒い綺麗な生き物がふんわりと笑った。

「おはよ。顔洗ってこい。朝飯にしようぜ」

あ。やっぱり、俺の奥さんだよ、この子。






!!!んなわけ、ねーだろ!!??

「ぎょえぇぇぇぇええええ〜〜〜〜〜!!??」


俺自身も発したことの無いとはっきり言える奇声が家中にこだまする。
俺は土方が普通に俺の家の台所に立って飯を作ってるこの状況に、もはやパニック状態だった。
なんで!?なんでお前がいるの!!?嬉しいけど、意味わかんない!!
俺、寝巻きのまんまだし!!かっこ悪すぎ!!


と、俺が混乱してると、神楽が情け容赦の無い回し蹴りをかけてきて。
俺はそのまま床に叩きつけられた。
……あ、あれ?拍手の音が聞こえる…。これ、土方だったら俺泣くかも……。

俺はそのまま一旦意識を手放した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


どうやら神楽は、今日土方と動物園に行くという約束したらしい。
お前、そういうことはなぁ、昨日のうちに言っておけよな!!事前にわかってたらな、お前、俺だってもうちょっと早く起きてだなぁ、着替えて顔洗ってたわ!!


土方だってこんな俺の状態じゃ気を遣うだろう。案の定、神楽とだけ行くとか言い出した。

「いやいやいや、何言ってんの!銀さん今日ものすげぇ暇なんだよね!つーか、動物園今ちょうど行きたかったんだよね!」

「…そ、そうか…」

若干引かれてしまったようだ…。



神楽、ぐっじょぶだけど…素直に喜べねぇ―――…。
俺って、痛い人になってない?大丈夫?




てなわけで。
いつも通りの時間にやってきた新八も連れて。定春はババァに預けて。
俺たちは動物園へ向かった。






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