トントントン…という音がしてきて、私は目が覚めた。
新八が朝ご飯でも作っているのカ?
正直新八の作るご飯しょっぱいネ。
私も銀ちゃんも再三言うのに、あのダメガネはわからないみたいアル。
今一度言っておこうと思って、私は押入れから出て台所へ向かったヨ。
当然新八かと思ったら、台所に立っていたのは。
あのいけすかない不良警察の、煙草ばっかり吸う黒髪の男だったネ。
「あっ!ニコチン?何やってるアルかっ?」
私はびっくりして、それと同時に怒りが込み上げたアル。
人のうちで何をやってるアルか?警察がまさか泥棒アルか?
だけど、振り向いたニコチンは穏やかに私に話かけてきた。
「おはようさん。もう8時過ぎてるぜ?寝すぎじゃねぇの?」
その言葉を聞きつつ、私はいい匂いが漂っているのに気付いたネ。
匂いのもとを探ると、どうやら応接間のテーブル。上に乗ってたチラシを摘んで覗けば、名前はわからないけどずいぶん旨そうなおかずが並んでたヨっ!
「これ、なにアルか?ひょっとしてお前が作ったアルか!?」
そう聞いてみると、ニコチンはそれには答えなかった。代わりにこんなことを私に言ってきて、私はびっくりした。
「こら、チャイナ娘。行儀が悪いぞ?それに、挨拶はしっかりするもんだぜ」
……びっくりしたネ……。だって、こんなの、なんだか………。
マミーみたいネ……。
「……おはようアル」
私は呆然としながらも、ニコチンに挨拶する。ニコチンももう一度穏やかに「おはよう」と返してくれた。
「顔洗ってきな。もうじき飯も炊けるぜ」
「はいアル!」
やっぱりマミーみたいアル!
私は嬉しくなって、言われた通りに顔を洗いに行った。
「ニコチン、料理得意アルか?」
私は、ニコチンにくっついて料理をしてる様子を見てた。ニコチンの手つきは鮮やかで、新八なんかとは比べものにならない。
「まぁな。料理作るの趣味でよ」
「何でここで料理してるアルか?」
「……昨日、お前の雇い主に迷惑かけたみたいでな。そのお詫びだ。安心しろよ、ちゃんと材料費は渡すからよ」
どうやら銀ちゃんへのお礼らしい。ニコチンは冷蔵庫の野菜なんかを勝手に使ったことを謝ってたけど、新八の作るしょっぱい料理じゃなくて、おいしい料理になった方が材料も喜ぶアル。
冷蔵庫を開けてみると、あれだけ買い込んでごちゃごちゃになっていた中身が綺麗に整頓されていたネ。
ほんと、ニコチンはマミーみたいアル!
ふと、ニコチンの手元を見れば卵を割っている。
私は、前の銀ちゃんとの会話を思い出した。
確か、ファミレスのガラスケースに飾ってある造り物の料理を見ていたときだったネ。
『あー、あま〜いオムレツ食べたいなぁ…』
『銀ちゃん、おむれつって何アル?』
『あ?玉子料理だよ。つーか、おま、オムレツ知らねーの?そりゃお前、人生の4分の3は損してるよ。ビンボー酢昆布娘はこれだからなぁ』
『酢昆布バカにすんのか?それにビンボーなのは銀ちゃんの所為ネっ!』
それから言い合いになって有耶無耶になったのだが。私はずっと“おむれつ”気になっていたのヨ。
私は思い切ってニコチンに頼んでみることにしたネ。
新八に作ってもらったときはかわいそうな卵一歩手前だったけど。ひょっとしたらニコチンなら作れるかもしれないアル。
「…ニコチン、リクルートヨロシ?」
私の願いはあっさり叶った。ニコチンは素早くおむれつを作ってみせる。
私は嬉しくて仕方なかった。ニコチンは何でも作れるアル!
ニコチンがおむれつの理由を聞いてきたので正直に話すと、ニコチンは焦ったように「あいつ、洋食派か?」って聞いてきたので首を振った。
「銀ちゃん何でも好きネ。その中でも甘いものがめっさ好きで、甘い料理が好きネ。だからかぼちゃ煮とか煮豆とか甘い卵焼きとかすっごい好きヨ」
「甘党……なのか」
そう呟くと、ニコチンは納得したような顔して、その後またいそいそと卵を割り始めた。
きっと銀ちゃん用アルな!と思ったから、私あどばいすしてあげたヨ。
そんな感じで朝食を作り終えると、ソファで寝ていた銀ちゃんの声が聞こえた。
「うーん」
「銀ちゃんっ!起きたアルか?」
私は銀ちゃんのところに行ってみた。
「あー、ヴー…。……あれ、なんかめっさいい匂いするんですけ………ぇええっ!?」
「これ、みんなニコチンが作ったアルよ!」
「ええぇぇーーーっっ!!マジかっっ!?」
その後、銀ちゃんとニコチンはなんか会話してたけど、お腹空きすぎて全然覚えてないアル。