近藤さんはほんっっとしょうがない人だ。
男の俺に抱きついたりキスしたり、ホント何が楽しいんだか……。
あの人に触られることは別に嫌じゃない。
気持ちいいし、キスだって本当はそこまで嫌じゃない。
だけど、俺、男なんだぜ?
あんな女みてぇに扱われて、こっちもなんか変な声出ちまうし……ぶっちゃけ恥ずかしすぎる。
いくら親友だからって、そんな姿見られるのはなんかやだろ?
この間なんて……。
親友同士のふざけあいにしたら行き過ぎだろ!
思い出すだけで腹ただしいし、顔から火が出るほど恥ずかしい。
……あんなとこす、…吸われて………気持ち良くておかしくなりかけたなんて……。
ぜってぇ言わねぇ。
んなこと知られたら、ぜってぇまた触られる。
ふざけんなっつーの。いくら親友でもふざけすぎだ。
びしっと言ってやらねぇと……。
「トシは俺に触られたくないの?」
「……」
「おっさんだから、嫌なの?」
「近藤さん……違くてな、だから…」
「トシは俺が嫌いか?」
ウルウルの目で俺を見つめてくるゴリ…じゃなくて近藤さん。
「嫌いとかじゃなくて、あんまり必要以上にべたべたするな、って言ってんだよ。俺、そんな変なこと言ってるか?」
「トシ、俺たちは親友だよな?」
「あ?…あぁ、そーだな」
「親友だったらいーじゃないか。スキンシップだよ?」
「親友でも、やりすぎだろ。あんなんまるで…バカップルみてぇだろ」
「ばっかだなぁ〜。バカップルはもっとバカバカいちゃついてるよ。
俺たちは親友同士のいちゃつきようじゃん」
「そーかー?」
いやいや、ここで丸め込まれたら駄目だ。負けるな、俺。
「でも、やっぱやりすぎだろ。だってよ、あんなんおかしいだろ?
抱きついたり、接吻だってあんな…」
「トシ」
俺の話を遮って、鋭い声がした。驚いて近藤さんを見つめる。
「…近藤、さん?」
「駄目だ」
「え?」
「俺はトシに触りたい。だから駄目だ」
「……」
なんだそりゃ、と呆れてみせたかったが、近藤さんの纏うオーラがどす黒くて、言葉が詰まってしまった。
なんだ?
こんな近藤さん、初めて見た。
何も言えなくなってしまった俺を一瞥し、近藤さんは俺の方へ近づいてきた。
そしてがしっと腕を引っ張られ、あっという間に厚い胸の中に閉じ込められてしまった。
驚きすぎて抵抗ができなかった。ただ、だんだんとどす黒いオーラが薄れていくのは感じた。
「あ〜一週間ぶりのトシだー」
あんまり感慨深く言うので、俺は思わず笑ってしまった。
「あ!何笑ってんの?!こっちはトシ不足でふらふらだったんだぞ?」
「いや、あんた、何言ってんだよ?」
可笑しくてくすくす笑ってたら、また近藤さんの空気が変わった。
「トシ」
また鋭い声が聞こえて、少し身体が緊張した。
「俺はトシが不足すると、壊れるぞ?」
「え…?」
言ってる意味がよくわからない。
「壊れた俺は、トシも壊す。
だから、俺が壊れないように、トシは俺の傍にいなさい。
トシを定期的に補給させなさい」
「あの…近藤さん、壊れるって?」
「さっきの怖い俺になるよ。それは嫌だろ?」
「……嫌……だけど。何で?」
「トシが俺の精神安定剤なんだよ。トシが癒しなの」
「……はあ?」
言うに事欠いてなんだそりゃ?
俺が癒し?
精神安定剤??
俺は近藤さんという人がわからなくなった。
なんで男の俺が癒しなんだよ?女だろ、ふつー。
……近藤さんに女はいねーけど。
「普通、癒しは女じゃねぇの?」
「違うぞ、トシ。女性じゃ届かないところをトシは癒してくれてるんだ」
「……どこだそりゃ」
「とにかく、そういうことだ。トシ、わかった?」
「……」
「あれ?返事は?」
「……」
「とぉーしーぃぃ」
そんなの、そんなの……。
「…近藤さんの都合だけじゃねぇか」
「え?」
「俺に、メリットねぇじゃん。恥ずかしいだけで……」
「え?トシ、恥ずかしい?」
「!!」
しまった!つい言っちまった!