テレビで好きな作家の最新作が特集されていた。

それを見て「そういえば最近本屋に行ってないなぁ」と思いつき同じく特集されていた違う本に興味を示した元就の手を引き家を出る。

太陽の神秘、なんて元就のためにある本だと思う。

徒歩十分ほどの場所にある本屋はこの辺りで一番の品揃えで読書好きなら二時間は軽く本を物色していられるだろうと言う場所だ。

テレビで特集されるだけあってお目当ての本は店内入って直ぐの場所にあった。

それを手に取り他の本を物色するため店内を歩きまわる。

本屋でバイトしていただけあって本は大好きだ。
実家にあるのを含めれば数百冊の本を持っている。
友達にはよく図書館か此処は、と笑われた私の部屋には本棚が五つあった。


「あ、これ読んでない…」


手に取ったのは集めていたシリーズの最新刊。
他にも数冊買いたい本が見つかった。


「名前」


名前を呼ばれ足元を見ればやっぱり数冊の本を抱えた元就。
無言で手を伸ばすというその行動は財布を寄越せという意味だろう。


「あ、その本持ってる」

「なんだと」

「その赤いのも。
私のでいいなら貸すよ」

「…ではその分の金で他の書物を買おう」


再び本の物色に向かう元就を見送り軽く笑う。

彼等がこの世界へ来て数ヶ月。
最初は平仮名から始まった文字の勉強も元就はいつの間にやら漢字まで使いこなし時たまカタカナ言葉の意味を聞かれることはあれど一度聞いたことは忘れない性能のいい脳からか最近はそれも少なくなった。

因みに少し前までの広辞苑だった。

彼らの世界とこちらの世界が全く別物だと言うことは彼らもわかっていることなので(豊臣が織田の下にいたことに酷く驚いていた)(むしろ豊臣と織田が同じ時代に天下を狙っていたことに私が驚いた)未来を知られるのは…なんてことを気にせずに済んでいるから助かる。

因みに元就の次に此方の世界の読み書きに詳しいのは猿飛だろう。彼に関しては計算も得意だ。主に割引関連についての計算が。

チラシを毎朝チェックする彼はそこら辺の主婦より主婦らしい。

少しして再び財布を取りに来た元就に彼の財布を渡し自分も会計を済ますためレジに並ぶ。

平日の昼ながらもそれなりに混み合う店内に流石だな、なんて一人思う。

一冊一冊カバーを付けて貰うのは悪いのでそのまま袋に入れてもらいお金を払って本を受け取る。
隣のレジを見れば元就もちょうど会計を終えた所だったので半ば無理やり元就の手を取り(いつものことだ)店を出た。


「せっかく出掛けたんだからどっか行きたいよね」

「我はすぐ帰ってこの本を…」

「あ、ペットショップ行こうかペットショップ」


話を聞け!と怒る元就はガン無視。手をぐいぐいと引きながら歩き出す。

この数ヶ月で随分図太くなったもんだと我ながら思う。


「わ、見て元就。オウム」

「…ちっ」

「え、なんで舌打ち?」


聞けば元親がオウムも飼っていたらしい。…成る程。

そんな元就の視線の先にはやっぱりというかなんというか


「元就、猫のコーナー行こうか」


他の所より少し大きめなこのペットショップ。
色んな種類の猫がケージに入れられ陳列していた。


「この子がアメリカンショートヘア、こっちが…」


一匹一匹説明しながらちらりと元就を見れば僅かにだけど目が輝いていて思わず笑いそうになるのを堪え、再び猫に目をやる。


「舞ちゃん…この前話した美容師さんの家の猫が子供を産んだんだって。
良かったら一匹貰って欲しいって言うんだけど元就はどう思う?」

「…!」


バッと此方を向く元就。
や、やばい…可愛い…っ


「ど、どうしても貰って欲しいと言うのなら貰ってやればいいではないか。
世話なら我が見てやらんこともない」

「そ?じゃぁ家に帰ったらみんなの説得つき合ってね」

「…仕方あるまい」


何が何でも言いくるめてやるわ、なんて言いながら嬉しそうにはにかんでいるのを彼は気づいているだろうか。

ここが家ならば思い切り抱きしめ可愛い可愛いと愛でるのだがここでは流石に止めておこう。


「猫、飼えることになったらまたここ来ようね」

「…うむ」


さぁ、そうと決まったら家に帰ってまず猿飛から説得だ。


そう意気込んだ、ある日のこと。


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こ、こんな感じでよかったでしょうか…?
リクエストありがとうございました!


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