大学を卒業し早三年。
イコール集英社に勤めだして三年。
あの頃はまさか自分が集英社に就職するなんて考えもしなかった。





「すみませーん!これお願いします!」


定時を少し過ぎた頃。私は事務のお姉さんから預かった書類と共に週刊ジャンプ編集部に来ていた。


「あ、名前ちゃん!いらっしゃい」

「お菓子いる?」

「わ、ありがとうございます!」


正直餌付けされている感はあるものの、金さんから差し出されたクッキーを有り難く。


「今日デート?」

「あ、瓶子さんこんにちは。はい、デートなんですよー」


へらーっと笑うとそうかそうか、と頭を撫でられる。…あれ、なんか小学生みたいな扱いされてないか?


「ねーねー、名前ちゃん吉田さんなんか止めて俺にしない?」

「雄二郎さんは嫌です」

「俺"は"なの!?」


途端に起こる爆笑。
私はあははは、と笑って誤魔化しながら視線は部屋の中をうろちょろ。

―私は元々漫画家希望で、昔よくここに漫画を持ち込んでいたため週刊ジャンプの編集部の方々とは顔見知りで、こうして何か用事があってやってきたときはみんなで構ってくれる。

当時の担当さんで、私が利き手の怪我から漫画家を断念してからもずっと支えてくれたのが吉田さん。今はなんと私の彼氏さまなのである。

そんな吉田さんと久しぶりのデートなんだけど…まだ帰ってきてないみたいだ。今日は平丸先生のところに行く日だからもしかしたらまた脱走されたのかもしれない。

後でマッサージでもしてあげようかな。
そんなことを考えながら口に入っていた飴をがりっと噛んだ。


「いやぁ、しかしあの名前ちゃんが集英社に就職するとは…」

「しかもこんな美人になって」

「なんか瓶子さんと相田さんおじさんみたいです」


なにおう!と瓶子さんに頭を思い切り撫で回され慌てて声を上げる。


「せっかくのセットが…!」


けらけらと笑う皆さんにむぅ、と口を尖らせるとお目当ての人物が入ってくるのが見え、ぱぁああ、と顔が明るくなるのが自分でもわかった。


「吉田さん!」


吉田さんは駆け寄ってきた私の頭をぽんぽんと叩きそれから佐々木さんと一言二言話してから私の腕をつかみそのまま集英社を後にする。
私の腕を掴みながらずんずんと歩く吉田さんは不機嫌で、少しだけ怖かった。けれどそれ以上に、


「…ヤキモチですか?」


ピタッととまる足。腕を掴む力が弱まる。ヤキモチだったらいいな、そんなことを考える。


「だったら?」


少し目を背けながら言う吉田さんの腕に思い切り抱きついた。


「へへ」

「大体君は無防備すぎるんだ」

「でも軽くはないですよ」

「知ってる」


何てたって吉田さんは初恋の人でもあるのだから。
ずっとずっと片思いしててやっと恋人になれたんだ。他の人なんか眼中にないなんてもんじゃない。


「雄二郎は本気だから近付かないように」

「はーい」


年は10歳以上違うし、不安になることもあるけど愛されてるなぁ、なんて実感した、ある夕暮れのはなし。


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ヤキモチやきの吉田さんに萌えます


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