ある休日。
昼間から無理矢理連行された何のための集まりかもわから食事会。いつもの如く酔っ払って喧嘩しだしたじいちゃんとはじめ先輩のおじいさんに呆れながらこれまたいつものようにはじめ先輩と二人で部屋を抜け出す。
「またヨーグルッチですか」
「テメェもまたココアだろ」
「まあ、そうですけど」
ぶらぶらと足を揺らしながら座るのは食事会の会場であった旅館近くの公園のベンチ。
はじめ先輩は足を思い切り開きベンチの背もたれに片腕を掛け空を仰ぎながらヨーグルッチを飲んでいる。
「先輩とヨーグルッチの組み合わせってなんか笑えます」
「ああ?お前がコーヒー飲むよりかはねぇだろ」
「どういう意味ですか…!そりゃ、飲めませんけど」
そして似合わないのもわかってる。
「…つーかお前、子供料金で入れるだろ。映画館とか」
「な!は、入れませんよ流石に!」
「いーや入れるね」
「入れないです!」
「じゃあ行って試してみるか?」
にやりと笑ったはじめ先輩にいらっとする。なにその勝ち誇ったような馬鹿にしたような顔…!
「いいですよ、試したらいいじゃないてすか!」
▽
結果は言わずもがなだった。
「むしろ向こうが中学生料金で計算してたじゃねぇか」
売り言葉に買い言葉。連れていかれた映画館でスタッフのお姉さんは私とはじめ先輩を見て「あ、中学生料金はこちらになります」と笑顔で案内してくれた。
「…で、でも中学生料金だから!普通、の子供料金ってのは小学生の料金で、だからまだセーフ、…うう…」
こ、高校生です…と言ったときのお姉さんの顔を一生忘れられないだろう。
そ、そりゃ身長は人よりちょっとだけ小さいけど!化粧してないしいきなり連行されたからほぼ部屋着な格好だし、でも迷わず中学生料金ってつまりがっつり中学生に見えたってことでしょ?
…ショックは大きい。
はじめ先輩も流石にからかい半分だったらしく、先輩が言い出したことなのになぜか軽くひかれた。はげちゃえばいいのに。
「って、っていうかなんでホラーなんですか…!」
「あ?映画つったらホラーだろ」
「む、無理、無理です、仁侠物にしましょうよ!」
「んなもん家帰れば本物いっぱいいんだろ」
「ホラー、ホラーは無理…せめてスプラッタ系にしましょうよなんでがっつり幽霊系なんですか…!」
始まる前からぐすぐす泣く私に対してはじめ先輩は半笑いだ。
これ、絶対わざとだ…!
そんな私たちが座っているのは所謂カップルシートというやつでしかも貸切状態。というかvip席…?
はじめ先輩が学生証を出した瞬間にお姉さんが真っ青な顔してここに案内された。…ヤクザだから?
「うう…うえ、ひゃあ!」
「うるせー…っておいコラはなせ!」
OPの時点で無理と判断した私は思い切りはじめ先輩の腕にしがみつく。恥とかそんなもんポイだポイ!
「こ、怖いんですよばかぁ…こ、これくらい勘弁してくださいよ!」
―ギャー!
スピーカーから男性の叫び声が聞こえ思わず腕に力を入れる。
「は、はじ、はじめ先輩、うわあああ!」
それから映画が終わるまでの間はじめ先輩にしがみきっぱなしでずっとその間はじめ先輩が胸が当たるだのなんだの気にしていたのを知ったのはこのずっと後の話だ。
------
どうしても甘くならない二人…