うう、と痛む頭を押さえながらその場に横たわる。
場所は屋上。男鹿君が出入りしているためかここに来る生徒は殆どいない。
「名前ちゃん?」
なのにこんな時に限ってなんで来るの…そう胸中で文句を言いながら顔を上げると、そこには見ただけで私を安心させる魔法の人。
「夏目先輩…」
「頭痛いの?」
「…はい」
横たわる私の隣に座り込む先輩にこくんと頷く。
「熱は?」
「ないです…風邪じゃないから…」
偏頭痛持ちの私はよくこうして頭痛をおこす。夏目先輩はそのたびに心配してあれこれしてくれる。それが嬉しくて、でも申し訳なくもあった。
「ほら、そんな硬いとこに寝てないでこっちおいで」
ぽむぽむと上下する夏目先輩の手が示すのは先輩の膝。
普通逆じゃないかな、とか考えつつその言葉に甘え先輩の膝に頭を乗せた。
「風が気持ちいい…」
「ねー」
「でももうすぐ暑くなりますね」
「それもそれでいいね」
「えー」
暑いの嫌い、と顔をしかめる私に夏目先輩は、ははは、と笑う。
「暑くなったら名前ちゃんも薄着になるし」
「な…!なりま、……すけど何言ってるんですか!っつー…」
自分の叫び声が頭に響き頭を抑える私に夏目先輩が「ほら、大声出すから」と茶化すけどこれは明らかに夏目先輩が悪い、と思う。
「ばぁか」
「俺も男だからね」
「…そーですね」
そりゃ、わかりますけど、でも…
なんとなく悔しくて夏目先輩の腰に腕を回しぎゅーっとお腹に顔を埋める。贅肉の欠片もないかたい腹筋に悲しくなったのは内緒だ。
「名前ちゃん」
「むー」
「こっち見てくれなきゃちゅーするよ」
「ばぁか」
「それ二回目」
くすくすと笑う夏目先輩にむぅっとしながらも大人しく顔を上に向ける。
「夏目先輩の馬鹿」
「まだ言う?」
「じゃー大好きです」
「…」
「えへ、照れてる」
普段は甘い言葉とかガンガン吐いてるのに自分は不意打ちに弱いとかかわいい。
「ちょっと寝ます…」
「…うん、おやすみ」
こうして話しているだけであれだけ辛かった頭痛が治るなんて
本当ベタ惚れだな、なんて思う。けれどそれが嫌じゃないから不思議。
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私にはこれが精一杯の甘さでした…すみません…