柔らかい日差し
心地いい風
開け放った窓

窓の近くでごろんと横たわり目を瞑る。


「眠いのか?」

「んーん。眠くはない」


ただ日差しと風が気持ちよくて、そう返しながら目を開ける。

あの、石矢魔高校で東邦神姫なんて呼ばれる四人の内の一人で
馬鹿みたいに喧嘩が強くて喧嘩が大好きで、ちょっと天然で

そんな彼に会ったのは数ヶ月前。バイト先で暴れる不良を彼が片付けてくれたのが出会いだった。

それからまるで謀ったかのようになんども遭遇し、そうもする間に気が付いたら恋人同士になっていた数週間前。

未だに彼といると心臓は落ち着かないし、ガラにもなく顔が赤くなったりするけど、それが心地いいと感じたりするから末期だ。


「東条さん」

「んあ?」

「もうちょっとそっちいってもいいですか?」

「…あー、ああ、…ん」


目を反らしながら答える彼の頬は僅かにだけど赤く染まっていて。それにときめきながらも同じく頬を赤らめているだろう自分の顔を隠すように俯きながら東条さんに少し近づく。

汗と土とお日様の匂いがする東条さん。
東条さんの隣は、とても心地いい。


「小さいな」


ポツリと東条さんが言う。


「東条さんが大きいんですよ」


これでも平均値です
と私は返す


「腕なんか簡単に折れそうだ」

「意外に折れないですよ」

「…触ったら折れそうで怖いな」

「私これでも骨太です」


そんな会話をしながらきっと考えているのは同じことなんだと思う。

私は、今まで誰かと付き合ったことないし、人を好きになったこともほとんどない。
東条さんは今までそんな余裕もなかったし恋愛事には滅法弱いと言っていた。

有り得ないくらい鈍い東条さんと付き合えたことはもしかしたら奇跡なのかも。

そんな二人だから、二人きりになるとお互いうまく会話できないし、相沢さんなんかには初々しいと笑われてしまうくらい。

「(触りたい)」


お互い距離をはかりながら、考えるのはそんなこと。

東条さんならそんな回りくどいことしないで普通に触れてきそうなのに。
懸念してるのはさっき彼が言ったことだと思う。


「…確かに、骨なんかその気になったら折っちゃえそうですけど」


何度か見たことのある東条さんの喧嘩の場面。
彼は化け物みたいに強かった。

骨だって簡単に折っちゃえるだろう。


「でも大丈夫です」

「大丈夫…」

「大丈夫です。…っていうか、触って欲しい、っていうか、…はい」


かああああ、と赤らめる顔を反らしながら東条さんのそのたくましい腕を掴む。

東条さんはピクリとして、それから戸惑いがちにその手を伸ばして私の後頭部に触れた。

そのままポン、と東条さんの胸に額を付けるような体勢になり、お互いはにかんで笑いあう。


「心臓早いな」

「東条さんこそ」

「…だな」

「…はい」

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あまり初々しい感じにならなくてすみません…


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