父さんの運転する車でおばあちゃんの家に向かう。おばあちゃんの家は遠くて、いつも朝早くに家を出てわたしとおねぇは後部座席で寝ていく。三時間とか四時間とかかかるんだもん。
「あと何分くらいで着くー?」
「三時間かなー」
「さっき二時間って言ってたよね?」
なんで増えてんのさ。そんな会話を父さんと交わしながら見覚えのある景色に「あと30分くらいかな」と勝手に予想する。
毎年行っている場所だから近くに行ったらわかる。
予想通り30分程で到着したばあちゃんの家の庭では相変わらずペットの柴犬が走り回っていた。
車の荷台から荷物を下ろして父さんの後に続き家に入る。
「あら、大きくなったねー。何年生になったの?」
「四年生、です」
人見知り気味な私は集まっている親戚のおばさんの相手をへらりと愛想笑いを浮かべながらしつつこの家に住む従兄弟の姿を探す。
「名前」
「雄!」
私が見つけるよりも先に私を見つけた従兄弟に駆け寄りはぁ、と息を吐く。
「久しぶり」
「大きくなったなー。四年生だっけ?」
「うん。身長もうすぐ150cmいくよ」
「…はやくない?」
「クラスで二番目に大きいから」
従兄弟の雄。
8歳年上で、親戚の中で唯一ほとんど人見知りしないですむ相手。
「本当、大きくなったわねー」
「あ、ちえちゃん」
間違えた。ちえちゃんにも人見知りしない。ちえちゃんは雄のお姉さんで今年20歳になった美人さんだ。
「ちえちゃーん、あのね、」
おねぇはちえちゃんが大好きでいつもちえちゃんにべったりしている。そして私は雄にべったり。…ってわけでもないけど、でも大体雄と一緒にいる。女の子らしい話とか苦手だから雄と漫画の話してた方が楽だから。
「部屋行く?」
「行くー。漫画増えた?」
「そりゃあもう」
雄は漫画が大好きで、雄の部屋には沢山の漫画がある。
漫画だけじゃなく小説なんかもいっぱいあって、おばあちゃんの家に来る度に雄の部屋で漫画や本を読み帰るときには雄がいらなくなった本を貰って帰る。
小学生だからお小遣い少ないし、凄く助かる。
「わ、これわたしも持ってる」
「おもしろいよな、それ」
「主人公の側近がかっこいい」
「…その人確か40代だよね…?」
ベッドに背中を預けるように座る雄の隣に腰掛けて、学校であったことなんかを話ながらたわいもない会話を続けていく。
「そういえば雄、受験生でしょ?邪魔じゃない?」
「推薦で決まってるから大丈夫」
「よかった」
さすが勉強のに邪魔するわけにはいかないから。
「絵は上達した?」
「この間金賞とった。
イラストは描きたいけど母さんがうるさいから学校でしか描けないからあんまり」
「おばさんは相変わらずだなぁ」
母さんは私が漫画を読んだりイラストを描いたりするのをよく思ってない。テストでいい点とってるし自分のお小遣いで遣り繰りしてるからあまり言われないけど小説家になりたいなんて言ったら多分、うるさい。
「高校卒業までにデビューしたいんだ」
「小説家?」
「うん。デビューしちゃったらいろいろ言われないでしょ?」
勿論、そんなに簡単じゃないけど
膝を抱えて顔を埋める。
「名前なら出来る」
「根拠は?」
「俺の従兄弟だから」
きっぱりと言い放った雄に苦笑して
でもその言葉が嬉しくて
その雄の言葉が支えになり無事小説家デビューするのはその六年後の、話。
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あまり子供設定が活かせてない…?