「あの、このコーナーって」
「あ、えっと、わ、私先生のファンで、それで、コーナー、任されたときに、つい…」
「このポップも、あなたが?」
「は、はい!」
凄い。素直にそう思った。
私の作品の一つ一つにつけられたポップ。全部にイラストや煽り文句が書かれていて、それがまた絶妙に上手い。これ、他の人の作品だったから手を伸ばしちゃうよ…
「ありがとうございます。凄く、凄く嬉しいです」
「そ、そんな…!」
「本当に嬉しいんです。何か、お礼をしたいのですけど…うーん、賄賂みたいになっちゃうかな…」
「サインとかならいいんじゃねーか?」
サイン…サインか。
「私のサインなんかいるかな…」
「さ、サイン…!?」
「嬉しそうだぜ?」
「…それでお礼になるのなら、是非書かせて下さい」
あわわわわ、と顔を真っ赤にしながら色紙とペンを取りに行く店員さんを見ながら「やばい」と呟く。
「凄く好みだ」
その言葉に、ぶっ、と福田君が吹き出した。
「名字さーん!」
聞こえてきた声に顔をあげると、ぶんぶんと手を振る見覚えのある姿。高木君だ。
隣には真城君もいる。
「名字さんもこれを見に来たんですか?」
「ううん、たまたま寄ったらこんな風にコーナー化してもらっててびっくりしたよ」
凄いッスよね、これ
と興奮気味に話す高木君はどうやらとある掲示板のラノベ作家について語るスレッドでここが話題になっていたのを見て学校帰りに真城君を引き連れわざわざ見に来たらしい。…そ、そんなものがあるのね。
「名字さんは福田さんと…?」
「それもたまたま。締め切り明けの鬱憤晴らしに散財してたら街中で会って、目的地が一緒だったから一緒に来たんだよ」
「そうなんですか」
高木君も真城君も新妻君と違うベクトルで素直でいい子達だ。
新妻君が弟なら二人はかわいい後輩みたいな…そんな感じ。
「お待たせしました…!」
「あ、いえ、そんな慌てなくても…」
ぜぇぜぇと息を切らしながら色紙とペンを持ってきた店員さん(島原さん、というらしい)から色紙とペンを受け取り、本を読めるようになっている椅子に腰掛け、サインを書く。
店用と島原さん宛てに一枚ずつだ。
わざわざ隣の文具店まで買いに行ってくれたらしい色紙はまだ何枚かあり、それを見てにやりと笑う。
「これ、使っちゃっても大丈夫ですか?」
「は、はい!」
「福田君、真城君、高木君ちょっと」
くいくいっと手招きをして、三人を呼ぶ。
「はい、こて書いて」
「え?」
「お、いいねぇ、書くか!」
戸惑う真城君と福田君を横目に島原さんを見やる。
「この子達、ジャンプの漫画家さんなんですよ」
「えっ、そうなんですか…!?」
「その内有名になる子達なんで、貰っておいて損はないですよ」
身内贔屓とかそんなんじゃなく、この子達は本当に有名になると確信してるから。
「コーナー、本当に嬉しかったです。ありがとうございます」
深く深くお辞儀をし、カゴに入れていた本の会計を済ませ店を去る。
明日から、また頑張ろう。
―そしてその本屋に高月凌、福田真太、亜城木夢叶の色紙が三枚並んで飾られるのはそのすぐの話。
―さらに一連様子が某掲示板に書き込まれ話題になったのをしるのは、もっと後の話だ
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福田さんと買い物
福田さんとばったり遭遇→二人でお出掛け
亜城木と本屋でばったり
3つまとめてしまいました…!