同じバイト先の先輩
優しくて、強くて、ちょっと胡散臭くて
頼りになる人



「おはよーございます」

「あ、おはよう。名字ちゃん」


休日なのに朝からバイト、という気だるさからついだらけてしまった挨拶にいつもの様に綺麗な笑顔で返してくれる夏目さん。
実は夏目さんはナルシストっぽくて苦手だったんだけど最近はいろんなことを話せるお兄さんみたいな存在になりつつある。

元来男という生物が好きではない私にとってそれはかなり特殊なことなのだけどそれが何故かというのは夏目さんが男性らしくないから、ということにしておくとしよう。


「今日特売なんでしたっけ」

「おむつとトイレットペーパーかな」

「げ、めちゃくちゃ忙しいじゃないですか」


うげぇ、とあからさまに嫌そうな顔をする私に夏目さんは「素直だなぁ」と小さく笑った。

こういう態度を許してくれるところも親しみやすい理由の一つだったりする。


私の働くドラッグストアの朝はレジ、検品、品出しに分かれそれぞれ作業をする。
私の最初の仕事はレジ。
レジは二時間までしか連続でやってはいけない決まりなので二時間きっちりレジをやり、そのあと昼食を挟み品出しというシフトなのだけど考えただけで嫌になる。休日の朝は変なお客もいっぱいいるからだ。


「いらっしゃいませー、ポイントカードはお持ちですか?」


流れ作業もいいとこだがかろうじて笑顔だけは絶やさずに接客していく。


「1000円お預かりいたします、こちら450円のおつりとポイントカードのお返しですありがとうございますまたお越しくださいませー」


一人さばいてさぁ次のお客。いらっしゃいませーと変わらず特に気持ちのこもってない挨拶をしてカウンターに置かれたペットボトルを手に取ると「名字?」と名前を呼ばれ顔を上げる。


「はい名字ですが」

「お、やっぱり名字か。久しぶりだなー、ここでバイトしてんの?」


なかなかに馴れ馴れしい態度だ。
知り合いの様だが残念ながら顔を見てもだれだかわからない。


「はぁ、まあ見たとおりです。こちら一点で98円ですねー」「あー、じゃあ100円からで」

「はい、100円お預かりで2円のお返しです」

「なー、今日何時まで?」


なんだこいつ本当馴れ馴れしいな…って、


「あ、なんだ先輩じゃないっすか」

「は?おまっ、わかってなかったのかよ」

「いやぁ、全く。今日は17時までっすねー、残念無念また来週ー。またのお越しをお待ちしないでおきますさようならー」

「おい!」

「なんですか次つまってるんですよ。お次のお客様お待たせいたしましたー」


まだぶつくさと何かを言っている先輩(名前忘れた)をスルーして並んでいた子供からお菓子を受け取る。くそ、可愛いな。

ピッ、とスキャンしてお菓子にテープを貼ってやりはい、と渡す。ありがと!という笑顔に不覚にも癒された。

ありがとうございましたー
おねーちゃんばいばーい
はい、ばいばい

そんなやりとりをしてふと顔をあげると


「何してるんですか夏目さんサボってる暇あったら変わってくらださい」

「…サボってるわけじゃないよ」


レジ前のお菓子を出しながらこちらを見ている夏目さん。うへ、なんか機嫌わるい?


「さっきの子さ、」

「ああ、かわいかったですよねあの子」

「いや、その前の」

「え?ああ、なんとか先輩」


なんだそっちか。さっきの子供かと思った。
夏目さんは何故か不機嫌そうで、そんな夏目さんは初めてだったため少し戸惑う。


「仲良さそうだったね」

「やめて下さいよ相手は男ですよ?」

「男嫌いなの?」

「好きじゃないです。さっきの人はあれですよ。中学の時の部活?あれ、委員会だっけ…なんかそんなんで一緒でやたら絡まれた先輩です」


多分。と付け加えながらまあどうでもいいや、と思考を放棄する。


「俺は?」

「夏目さんは嫌いじゃないです」

「ふーん?」

「なんなんですかその顔…不機嫌かと思ったらいきなりにやにやするとかキモイです」


にやにや、というかにっこりというか。
とにかく機嫌は回復したらしい。


「さっきなんで機嫌悪かったか教えてあげようか?」

「別に興味ないっす」

「冷めてるなぁ」


くすりと笑う夏目さんはもうすっかりいつも通りだ。


「ヤキモチ、だよ」

「ヤキモチ?」

「そ。ヤキモチ」


それは、つまり、


「…え?」

「じゃ、そういうことだから。レジ頑張って」「え、ええ、えええええ…」


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書いてて楽しかったのですが期待されてた話と違う気が…



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