そういえば神崎先輩達は名前ちんのことどう思ってるんスか?
そんな花澤さんの突然の言葉に三人がキョトンとする。
「どう思ってるって?」
「妹とか、可愛いとかあるじゃないッスか」
「妹ねぇ…」
質問をした本人は大森さんに呼ばれてあっさり消えていったけど、確かにこの三人が名前ちゃんのことをどう思っているか気になるからつい聞き耳を立ててしまう。
「どう思ってる、ねぇ。城ちゃんは妹?」
「…そうだな。妹みたいなものか」
「なーんか目を離せないよね、あの子」
臆病でへたれなのに姫ちゃんに喧嘩売ったりするし。
そこらへんの度胸は流石神崎君の同業者だよね。
そう話す夏目さんの顔はいつもよりほんの少し柔らかかった気がした。
「神崎君は?」
「あ?知るか」
「許嫁なんでしょー?
っていうかそもそもなんでそうなったの?」
確かに。許嫁なのは聞いていたけど、名前ちゃんのところの組は神崎さんのとこより大きいと聞く。わざわざ政略結婚するのだろうか。
「…うちのじじいあいつんとこの組を助けたらかわりにうちが危なくなったら娘か孫差し出すって約束だったんだよ」
「へえ…じゃあ生まれながらに名字ちゃんと神崎は許嫁みたいなもんなんだ」
「つい最近まで知らなかったけどな」
へぇ、面白いね。とヨーグルッチを啜りながらダルそうに話す神崎さんに夏目さんが笑う。
「で、神崎君は名字ちゃんをどう思ってるの?」
「…」
神崎さんは鬱陶しそうに夏目さんを見て、それから少し考え込むようにそっぽを向いてからおもむろに口を開く。
「変人」
本人が聞いたら怒り出しそうな返答だ。
「あははっ、確かにねーへたれで生意気でわがままでびひりでね」
「怖がるくせに婚約も嫌がんねーし」
言われてみれば名前ちゃんは神崎さんとの婚約がバレるのは嫌がっていたものの婚約自体は嫌だと言ったのを聞いたことがない。俺たちが婚約のことを知ったのはつい最近で、それまで色々あったのかとも思ったけどそうでもないようだ。
神崎さんや夏目さんが言うとおり彼女は少し変わっているから何を考えているのかわからないときがある。けれど一つわかるのは名前ちゃんは神崎先輩を嫌ってはいないことだけか。
「可愛いよね」
「そうかぁ?」
「そういえば古市君も名字ちゃんと中学から一緒なんでしょ?」
「えっ、あ、そうです」
急に話を振られついあたふたとしてしまう。
確かに名前ちゃんとは中学三年間ずっと同じクラスだった。
「彼女、中学の時はどんな子だったの?」
「普通の子、でしたよ。運動も出来る方だし頭もよかったけど目立たなくて…友達も殆ど居なかった気がします。最近気付いたんですけど多分付き合い方がよくわかんなかったんですかね」
名前ちゃんは中学にあがるまでおじいさんの家…つまりヤクザに囲まれて生活していて同級生からは嫌遠されていたと聞いたから。それは凄く寂しいことだと思う。
「それに、あんまり笑ってなかったかも」
「あ?年中へらへらしてるだろ、あいつ」
「今はそうですけど…っていうか今がそんなんだから逆にそう思えるって言うか…」
あの頃も名前ちゃんは笑ってたけど笑ってなかった。今、本当の笑顔見れるようになってそう思うようになった。
「多分今が凄く楽しいんだと思うんですよね」
「本当、可愛いなぁ名字ちゃん」
「…ああ」
「ね、神崎君」
「…ケッ」
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リクエスト内容と違う感じになっちゃった気が…すみません…