「あ、」


洋子さんとの打ち合わせ後、そのままカフェに残ってキャラデザを考えていたら見覚えのある顔を見つけた。


「(吉田さんだ)」


吉田さんも打ち合わせ帰りなのだろう。
道路の向こう側のファミレスから出てきた吉田さんは担当している漫画家さんらしき人と別れふとこっちを見る。


「(あ、目があった)」


へこりと頭を下げれば吉田さんはやぁ、とでも言うかのように小さく手を挙げた。

そして道を渡って店内に


「名前君」

「こんにちは」


極々自然な仕草で私の前の席に座りコーヒーを頼む吉田さん。その全ての仕草が雄二郎と違って大人に見えた。


「打ち合わせ?」

「はい。と言ってもさっき終わったんですけど」

「ならよかった」


ここでこれから打ち合わせだったらどうするんだろう、なんて考えるも恐らく彼はわかってて聞いただけなのだろうな、となんとなくわかった。


「吉田さんも打ち合わせ帰りですか?」

「うん。それ、新しいキャラデザ?」

「はい。新シリーズに出そうと思って」


吉田さんに見せるのは少しだけ緊張する。
なんてったってあのジャンプの編集者。雄二郎もそうだけど吉田さんは班長まで勤める人だ。


「名前君のキャラはいつも面白いよね」

「…ありがとうございます」


だから、褒められると素直に、嬉しい。


「そういえば、この間の写真みたよ」

「…写真?」

「中里先生の取材の時の。
ジャージ姿とか福田君の学ラン羽織ってるのとか」

「ええー」


なんでそんなの…あ、雄二郎がキムさんに頼んで写メらせてたからあれ?うわ…


「…忘れてください…」

「なんで?可愛かったのに」

「……っ」


こういう時大人の人はズルいと思う。
サラッとこんなことを言ってしまうのだから。


「…今度雄の学生時代の写真持ってきますから」

「ノった」


まぁ、人の記憶なんてそんな簡単に消したり出来ないんだけどせめてもの嫌がらせだ。雄二郎への。


「雄二郎はいつからアフロなの?」

「高校卒業してからですね。
元々癖っ毛で、それを隠すために」


あの時は笑ったなぁ、なんて思い出す。

殆ど氷の溶けたアイスティーを一口飲んで一息つく。


「雄二郎の従兄弟は名前君だけ?」

「いや、私の姉もいます。ただ姉は雄のお姉さんの方に懐いていたから」


昔から雄二郎の家に遊びに行っても三つ年上の姉は雄二郎の姉であるちえちゃんの後ろをついて歩いていた。

私は女の子らしい遊びとかもそんなにしなかったし雄が漫画をいっぱい持っていたのもあり雄の部屋に入り浸り漫画を読んだり漫画について討論したり


「妹というか弟感覚だったみたいなんですけどいつの間にかあんなにシスコンになっちゃって」


雄二郎が過保護になったのは多分雄二郎が集英社に入社してからだった気がする。

ただでさえ長野と神奈川県で離れててなかなか会えなかったのに自分が一人暮らし始めてなかなか会えなくなったせいか。年々お兄ちゃんというより父親みたいになってきている。


「この前名前君が集英社に来て顔がバレたせいかデスクに堂々と写真飾ってるよ、あいつ」

「雄二郎……!」


有り得ない信じられない有り得ない

あとで叱りつけよう…


「高校時代の写真だと思うけど、昔は髪赤かったんだね」

「あー…確かにずっと赤茶でしたね」


因みに今は落ち着いて少し暗めの色にしている。


「今の方が可愛い」

「……ありがとうございます」


まただ
この人はやたら可愛いとか言う
お世辞なのはわかっているが言われなれてないからその都度照れてしまうのが悔しい


…本当、大人はずるい


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甘く、なったでしょうか…?
すみません、私にはこれが限界で…!

リクエストありがとうございました!


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