「起きろ下林!」


バシッと頭を叩かれゆっくり頭を上げる。


「ぼーりょくはんたい」

「暴力じゃない体罰だ」

「きょーいく委員会とPTAと片倉先生どれがいいですか?」


さて授業に戻るぞー、とくるっと踵を返した英語教師にはふっと欠伸を一つ。
というかなんで選択教科を英語にしたんだ自分。英語好きじゃないのに。あ、得意だからか。


それは置いといて、すっかり目が覚めてしまった。嘘だけど。
せっかくいい夢見てたのに。これは本当だ。

タカシとユキオの間で揺れ動いていたカナエがどちらかを選ぶと言うときにいきなりタカシの元カノのサチコとカナエの元カレのシンヤが乱入しド修羅場になった瞬間にピエールが…


「ピエールって誰だろうね。伊達君」

「あ?」


選択の時間だけ隣の席に座る伊達君(確か彼は隣のクラスの人間だ)に尋ねればこれ以上ないくらいの不審な顔をされた。

誰だったんだピエール。ピエールという名前なのにも関わらず顔は今川先生みたいな純日本人にも程があるものだったし…気になって眠れない。

しょうがないので出された問題をちゃっちゃと解きノートに落書きをしていたら突然どこからか携帯の着信音が聞こえた。

―第九、だと…?

私のメール受信音と一緒じゃないか、なんて感動してたら私の普段座っている席に座っていた子があわあわしていた。


「やっべ。私のだった」


なんだよお揃いだーなんて一瞬はしゃいじゃったじゃないか。

あまりにその子があわあわしていたので仕方なしに立ち上がり「ちょっとごめんよー」と机から携帯を取り出す。


「あ、市ちゃんだ」

「市ちゃんだ、じゃない」


ばちこーん!と頭を叩かれう、ご…とよくわからない呻き声をあげその場にうずくまる。


「な、殴ったな…父さんにも殴られたこと…あったわ」


あるのかよ!と誰かのツッコミが入った。

頭を叩いたのは言わずもがな英語教師で少々ムカついたので「せんせーカツラずれてる」と言えばばっ、と髪を押さえた。
成る程。本当にヅラだったらしい。

ちゃっかりメールを返信してから若いのに可哀相に…という目で見たら「冗談に決まっているだろう」とまた頭を叩かれた。
自分の髪を思い切り引っ張りずれないだろ?と主張する英語教師にみんなが「なんだよつまんねぇの」という顔をする。


「あぁ、あれですか。植毛の方ですが」

「廊下に立ってるか?」

「やった、堂々とサボれる」


前に廊下に立たされた時に堂々と廊下に出れたのをいいことに片倉先生の畑へ行ってちょうど授業が休みで農作業をしてた片倉先生のお手伝いをしたことがある。
確かあの時もこの時間だったはずだ。また行って手伝えば野菜貰えるだろうか。


「ろーか行ってきます」

「待て行くな。今の流れで廊下行けると思ってんのかお前は。また居残りするか?あ?」

「やですよ今日こそはドラマの再放送が…」


キーンコーンカーンコーン


「お前のせいで授業半分も進まなかったじゃねぇか!」

「やったね」

「何がだ!」


いいからチャイム鳴ったのだから終わりにしましょうよ。市ちゃんとお昼食べながらピエールについて語るんだから。
ってだから誰なんだピエール。
ちなみにさっきのメールはお昼のお誘いでした。


随分くたびれた様子で帰って行く英語教師に「どうしたんだろうね」と伊達君に聞いてみたら「……あぁ」とよくわからない返答をもらった。
伊達君は憐れむような目で英語教師を見てました。


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