つい、いつものように授業中に爆睡してしまい英語の小テストを白紙で出すという暴挙に出てしまい放課後補習者とともに追試(というか再試)を受けることになってしまった。
入学して二週間で補習なんて…と思ったがそれがまさかまさかで居たらしい。
クラス唯一の補習者の名前は真田幸村くん。名前しか知らないがなかなかに女子に人気があり、それでいて超初らしい。
「先生出来ました」
英語の…なんて名前だっけ…隣のクラス担当してるザビー先生ならわかるんだけど…まぁいいや取りあえず英語の先生にテストを渡せば「満点取れるんなら最初から真面目にやれ」と怒られた。
「いやほらあれですよ。二時間目って眠くなるじゃないですか」
「普通眠くなるのは午後だ馬鹿。大体今日の授業は一時間目だったわ」
な、なんてこった。
「お前罰としてそこの真田に英語教えろ。真田のプリント終わらなきゃ帰れないと思え」「ええええそれはないですよ先生私今日はドラマの再放そ…じゃないタイムサービス?そう、タイムサービスがあるんですよ。ほら、私一人暮らしだからタイムサービスは大切でですね?」
「そうか。ドラマの再放送は諦めるんだな」
「せっかくの言い訳意味なし…!」
くそう、一瞬本音が出たせいで取り合ってすらもらえない…あ、
「先生ドラマの再放送明日だった」
「よかったな。これで思う存分補習に付き合えるぞ」
「職務怠慢で先生のこと訴えときますね。片倉先生あたりに」
「それはやめろ!」
私は何も聞こえない。うん。聞こえない。
私は先生の言葉をシカトしながら無心にプリントに向かっている真田君の前の席に後ろ向きに座り真田君の机の上に顎を乗せた。
「な…!?」
途端に顔を真っ赤に染め大げさな程飛び退く真田君におおーと私もややびっくりする。
なる程、本当に初らしい。
「真田君とやら、私は君がこのプリントを終わらせない限り帰れないらしいんだ。答え教えるから早く終わらせてしまおう」
「こらこら答え教えんのはなしだ」
「ええー」
「ええーはこっちの台詞だ馬鹿者」
なんだよ益々面倒ではないか。
未だ魚のように口をぱくぱくとさせている真田君を見上げ「早く終わらせよう」と繰り返せば彼は真っ赤な顔のままこくこくと壊れた玩具のようにひたすら頷いた。
「ここは過去形の文だからさー」
「おお!成る程!」
そんな微妙な空気も五分もすれば消え去りプリントもあと四分の一ほどまでになった。
「下林殿は英語が得意なのですな!」
「帰国子女だからね」
「そうなのでござるか!?」
「嘘だよ」
普通に日本生まれの日本育ちです。海外とか行ったことない。
「私はあれなんですよ。要領がいいってやつ」
「要領、でござるか?」
真面目にこつこつやらなくてもそれなりに出来るタイプ。
だがニアミスが多くて点数がとれない所謂"要領の悪い馬鹿"らしいが。
「真田君は要領悪そう」
「む…そうですな。要領で言えば佐助…うちの同居人がやたら要領がよくてですな」
「へぇ」
真田君曰わく勉強は勿論運動や家事も出来るらしい。家事も出来るとか何それ欲しい。
「旦那ー?まだ終わんないの?」
ひょこっと廊下から顔を覗かせたのはオレンジ色の髪の恐らく先輩。
真田君が「佐助!」と言ったのでどうやら彼が今話していた佐助さんとやららしい。
…チャラいな。やっぱりいらないや。
「って、旦那!?」
「なんだ佐助うるさいぞ」
「あ、ごめん…じゃなくて旦那が教室に女の子と二人きりなんてどうしたの旦那!」
二人きり…?と首を傾げればいつの間にか英語教師がいなくなっていた。
「…職務放棄…?」
というかこれあれじゃないかな。見張りがいないってことは私帰ってOK?いやいや何でだい真田君やそんな目で見ないでくれそんな捨てられた子犬のような…
「…さっさと、終わらせようか」
「あいわかった!」
負けた。つぶらな瞳に。
佐助さんとやらはどうやら先輩のようで(サンダルの色が違った)プリントを覗きながら「旦那こここの間教えただろ?」とぶつぶつ小言を言っていた。
「というか君この前毛利の旦那が引っ張って来た子じゃん」
「この前…?」
「ほら、昼食の時。毛利の旦那と仲いいの?」
「あれですよ、お隣さんってやつです」
真田君のプリントは猿先輩(こう呼ぶことにした)(猿先輩は涙を流して喜んでいた)のおかげですぐ終わったのだが帰ったときにはスーパーもしまっていて夕飯は毛利先輩の家に押しかけ肉じゃがを美味しくいただいた。
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