最初はかわいい子だなってだけだった。
かわいいけど、なんかいつもクラスに居辛そうで困ったような笑い方をする子だと。

だけどたまたまあの子が背の高い色黒の男の子と話しているのを見てあんな楽しそうな顔も出来るんだ、とも思った。そしてころころと変わる表情が可愛いとも。

今、偶然彼女が泣いている現場に居合わせて。黙って立ち去れば気付かれないのにわざわざ手を差し伸べちゃったりしたのは可愛い女の子が泣いてるのが嫌だっただけ。その女の子が教室に居辛そうなのも、泣いているのも同じものが原因だって知ってそれを排除しようなんてガラにもないことをしているのも、ただそれだけの理由。


「大丈夫?」

「…うん、ありがとう」


目を腫らしながら無理ににこって笑う顔が顔が気にくわなかったから、ただそれだけ。







桃井さつき
男子バスケットボール部のマネージャーで、その能力から一軍…更にレギュラーに一番近い位置での仕事を任されていることもありバスケ部の一部のファンから嫌がらせを受けていて、そのことからクラスでも浮いてしまっている
それが私が集めた彼女の情報だった。

…割とよく話すクラスメートに聞いただけだけども。


「女って面倒くさい」


故にあまり深く関わりたくないというのが私が常々思っていることだった。


「まあ、これなら簡単に終わるかな」


どうやら彼女の所属するバスケ部の人間も動いてるようだし、ちょっとつついてみるか。

―――ちょうど、目の前で呼び出しが起きてるみたいだし?


「うざいんだよ!とっとと辞めろっつったよね!?」

「やっぱり痛い目みなきゃわかんない?」


おおこわ…やだなー、関わりたくないなー、でも。


「えー、なんか面白いことやってますね。私も混ぜてくださいよー」


渡り廊下の屋根に腰掛け携帯を構えながら校舎裏を見下ろす。


「な…!」

「何よあんた!」

「ほら、ピースピース。カメラまわってるんだからピースしなきゃ駄目ですよ?」


ね?とにっこり笑い彼女たちを見れば五人ほどの少女達の間から見えるあの子の泣き顔。

…やっぱり、むかつくわ


「最近の携帯は凄いね。こんなに離れてても綺麗に顔が映ってる」


真っ青な顔の先輩方(靴の色でモロバレ)をくすくすと笑いながら屋根から飛び降りる。


「大丈夫?」

「川原、さん…?」

「怪我はないね…ま、とりあえず。せーんぱい」


さっさと消えてくれません?


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