少し肌寒い早朝。
休日だからとYシャツの上にカーディガンだけを羽織りブレザーはお留守番。調理中邪魔にならないように低い位置でお団子にしさつきとお揃いのシュシュで纏めた髪を鏡で確認したら準備万端だ。
大き目のトートバックを肩に掛け、しっかりと施錠してから学校に向かい歩き出す。

時刻は六時を少し過ぎたところ。家を出たよー、とさつきにメールすればすぐに昇降口で待ってるね!と返信が届いた。

これが他の子ならば待たせてはいけないと急ぐところだけどさつきに至っては私の歩く速度と家から学校までの距離をしっかりと計算して私の到着に合わせて待ち合わせ場所に来るため待たせる心配は殆どない。


「千波!」


校門をくぐり昇降口まで50M程の所にさしかかれば案の定さつきが中から出てきた瞬間で、流石、と小さく笑う。


「おはよう、さつき」


まだ起きて間もないのか髪を結っていないさつきに挨拶をしながら小走りで彼女に近付く。
うん、朝から可愛い。


「そして誕生日おめでとう」


パンッ、と鳴らすクラッカーが欲しいところだけどそれは流石に止めておく。早朝だしね。

その代わりトートバックの中からプレゼントを取り出し「はい、」と手渡した。

今日は5月4日。さつきの14回目の誕生日だ。


「え、え、ええ?」

「あれ、あってるよね?」

「……っうん!」


すっかり忘れてた、と笑うさつきにもう一度おめでとうと伝えやっとこさ校舎の中に入る。
私が靴をはきかえている間さつきは私の私のプレゼントを抱きしめたり両腕を前に突き出しプレゼントを眺めたりとなんとも可愛い仕草を繰り返していた。

どうしよう、顔がにやけてしまう。

そんなことを考えながら調理室までの道を歩く。


「あれ、千波調理室までの道…」

「あー…本当はね、昨日の帰り覚えちゃったんだけどどうせだったら朝一番におめでとうって言いたくて」


調理室までは昇降口から一本道だから昨日の内に覚えてしまっていた。
だから今日のはさつきのためとかじゃなく完全に私のわがままだから言い辛かったけど言い訳せずに素直に白状してしまう。


「ごめん、忙しいのに」

「………っ、ううん!嬉しい!」


*← →#
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -