なんとかすべて平らげ自分の使ったお皿だけ洗っていく。部員のは自分達でやらせるらしい。
ここに置かれている洗剤は安物だからか肌が合わないのはわかっているのでしっかり洗い流しハンドクリームを塗り込む。


「あ、そういえば明日はそのご飯作れる部員さん来るの?」

「うーん、来るって言ってたけどどうだろう」

「朝食とかさ、」

「あ!そうだよね…赤司君に聞いてくる!」


ぱたぱたと赤司のもとに走っていくさつきを見送り未だ食事を続けるバスケ部員達を眺める。…流石、よく食べるなー。


「(あ、テツ死にそう)」


なるほど、彼は見た目通り少食のようだ。


「川原」


そんなことをぼんやりと考えていたらいつの間にか目の前に来ていた赤司に名前を呼ばれる。


「すまないが明日の朝食も頼めないか」

「んー、…何時くらい?」

「出来れば七時半から食べれるように」

「わかった。簡単なものでいい?」

「ああ」


朝食ならご飯とお味噌汁と卵と…まあ、そんなに時間はかからないだろう。朝は強い方だし余裕だ。


「あ、一つお願いがあるんだけどさ」

「なんだ」

「校門か昇降口まででいいからさつきに迎えに来てほしいんだよね」


私が方向音痴だと知らない赤司は首を傾げたがみどが呆れながら説明するとふっ、と小さく笑ってからわかったと頷いてくれた。


「だけど驚いたな。学年トップレベルの成績保持者が方向音痴とは」

「万年首席君にそれを言われるのは複雑だけど、何故か道や方角に関しては記憶力が作用してくれないみたい」


入学してから今まで学年主席の座はずっと彼のものだ。
故に今まで主席ってのになったことはないけど順位にはさして興味がないから別に問題はない。負け惜しみとかじゃなくて。


「順位には興味がないようだな」

「うん。それなりに納得した成績とれてるし別に」

「いい順位をとろうと必死な連中に聞かれたらやっかまれるだろうな」

「まあ、そういう人達否定するわけじゃないけどさ。いい順位とるために必死に勉強するってなんか…よくわからないよね」


順位はあくまでおまけって考えだからか、いい点をとるために、ではなくいい順位をとるために、というのはよくわからない。


「あ、さつき!明日の朝さ、六時くらいに昇降口まで迎えに来てもらっていい?」

「うん、大丈夫!ってことは明日の朝も千波のご飯が食べれるんだよねっ?」

「うん。簡単なものしか作んないけど」


やったぁ!っと騒ぐさつきの頭を撫でくりまわしたくなるのをぐっと抑え、丁寧に髪を梳くように一回だけ撫でる。何この子本当にかわいい。


「じゃあ私は帰るよ」

「え?あ…そうだよね、もうこんな時間だもんね…」


しょぼん、と寂しげな顔をするさつきに私の顔はかなりだらしなくなっているだろうと思う。
その証拠にみどが呆れた顔してるし。ああ、どうしよう、可愛い。

にやけた顔を隠すように片手で口元を被うようにしながらもう片方の手でさつきの頭をぽん、と撫でる。


「もし時間あったらでいいんだけど、校門まで送ってくれないかな?」

「……っ、うん!」


ぱぁぁぁあ、と一気に表情が明るくなるさつき。
こういう表情の変化がいつまで経っても飽きない。

本当、かわいい


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