そう言って顔の前で手を合わせるさつきにどういうことだと首を傾げさつきと赤司君とやらを交互に見れば赤司君が本来食事を作ってくれるはずだった部員が急に来れなくなりさつきにその役目を頼んだらしい。なるほど。


「別に食事作るくらいはいいけど…あ、さつき洗濯物取り込みに行く途中だったよね、彼と話しとくから先にそっち行きなよ」

「え?う、うん」


パタパタと立ち去るさつきを見送り「よっ」と窓枠を乗り越え中庭に出る。


「あ、今更だけど川原千波です」

「赤司征十郎だ」


今更な自己紹介を終えてからさてどうしたものかと思考を巡らす。


「とりあえず私が作るかは別として、さつきに料理させるのはやめた方がいいと思うよ。なんていうか…独創的だから」


上手い言い回しが見つからなかった。
さつきの料理の腕前はハッキリ言って酷い。去年の調理実習でそれを身を持って体験しそれからはお湯を沸かしたりテーブルを拭いたりしかさせてないくらいに。


「桃井を立ち去らせたのは傷付けない言い回しが出来なかったからか?」

「って、いうかあの子の前で料理作らせない方がいいよーなんて言い方したらムキになりそうじゃん?まあ傷付けないためもあるけど」


出来ないだろ?って言われたら出来るもん!ってなっちゃう、そういう子供っぽい、負けず嫌いなところがあるから。


「そこもかわいいけど」

「…本当に仲が良いようだな」

「んー、まあね。それより、どうする?私は作ってもいいけど…もしあれなら料理出来なくても簡単に作れそうなレシピ書いて置いていってもいいし」

「そうだな、頼んでもいいか」


了解、と赤司の言葉に頷けばちょうどさつきが洗濯物のかごを抱え帰ってくるのが見えた。ナイスタイミング。


「お疲れ。夕飯、私が作ることになったから」

「本当!?千波の料理好きだから嬉しい!、でも本当にいいの…?頼んだ私が言うのもだけど…あ、私も手伝…」

「さつきは他に仕事あるでしょ?私は大丈夫だからそっちに専念しなよ。さつきの仕事はさつきに出来ないんだから」


さつきの申し出をそれっぽいことを言って断る。申し出はありがたいけど仕事が増えそうな予感しなしないから。
さつきは素直にわかった、頑張るね!と気合いを入れ直し赤司はそれを見て僅かに呆れたような顔をした。


「部員を一人手伝いに寄越そう。そうだな…」

「ミドリンはどう?っていうかミドリンくらいしか…」


青峰君は雑だしむっくんは食べる専門だし赤司君はいなきゃ困るし…次々と名前を挙げるさつきに赤司もそうだな、と頷き緑間を呼んでこい、とさつきに指示を出す。

さつきはうん、と頷き走り去り、再び赤司と2人きり。


「緑間と面識は?」

「あるよ。クラスはずっと別だけど。だからありがたい」


知らない人だと気を遣うし。
あ、そういえばみどって呼んじゃ駄目なんだっけ?なんて呼ぼう。みーくん?駄目だ、絶対怒られて最悪拗ねる。じゃあ無難に緑間くん?


「呼んできたよ!」


さっきから走りっぱなしなさつきの頭を撫でてさつきの後ろからやってきたみどにへらりと笑う。


「ハロー」

「…なんでお前がここにいるのだよ」

「相模が来れなくなったから彼女に夕飯の準備を頼んだ。
彼女を手伝ってやってくれ」


赤司の言葉にみどは二つ返事で頷き一度体育館に帰るがすぐ戻るから絶対にここにいろ。さきに調理室に行こうしたりするなとやたら念を押し消えていく。なんというか、人の出入りが激しい。ここ外だけど。


「千波ミドリンと知り合いだったの?」

「うん。あれだよ、たまに話に出る友人っての」

「ええ!?」


そういえば紹介するって言ったままそれだけだったっけ。


「ミドリンが!?え、一緒にご飯…女の子じゃなかったの…!それじゃ調べてもわからないはず…でもだって、え、恋人?私ずっとミドリンに嫉妬してたの…!?」

「…ああ、うん、いろいろツッコミ所あるけどとりあえず恋人ではないよ」


調べた、とか嫉妬してた、とかツッコミたいけどひとまず誤解だけ解いておく。
恋人同士とか、ない。


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