春。
私達は二年に上がり、クラス替えを終えた。

新しいクラスではさつきと同じクラスになりとりあえず万々歳。みどと離れてしまったのは残念だけど。

新しいクラスに、初めて出来た後輩に、そわそわしていたみんなも二週間が経つ頃には随分と落ち着きを取り戻していた。

新しいクラスは目立った問題児などもいなく、さつきに嫌がらせをしていた連中もいなかったからそれなりにいいクラスなんじゃないかと思う。どうでもいいけど。ああ、あえて言うなら何かと噂のモデルくんがいるくらいか。


「千波はG.Wなんか予定あるの?」

「特にはないかなぁ。さつきは部活の合宿だっけ」

「そうなのー千波と遊びたかったのに…」


しょぼん、と眉を下げるさつきの頭を撫でて最終日に遊ぼうよ、と慰める。たしか最終日は休みだと言っていたはずだ。

さつきはうん!と元気に頷きどこに行こっか!とスケジュール帳を取り出す。 ああ、可愛いなぁ。





学校に忘れ物をしたことに気付いたのはG.W初日の夕方のことだった。
まさか出された宿題のプリントを入れたクリアファイルを忘れてきたとは。自分の馬鹿さ加減にへこみながらもそういえばさつきやみどが学校で合宿しているんだっけ、と思い出し運が良ければ会えるだろうと制服に身をまとい家を出る。

ちなみに、家から学校まで徒歩五分という近さのおかげで道に迷ったことはない。いや、本当に。

正門をくぐり運良く開いていた昇降口から校内に入る。
いくら方向音痴とはいえ昇降口から教室まで迷うことなくまっすぐ行けた。

人一人いないシンとした教室は夕陽の橙色に染まりやたら綺麗で、一瞬見とれてしまう。

机の中から目的のものを取り出し、さつきの机に異常がないことを確認してから教室を出て、昇降口へ向かうとその途中、さつきの声が聞こえた気がして窓の外を覗き込めばさつきとバスケ部の部員…かな。みどもいるし。…が何か揉めているのが見えた。


「さつき?」

「え?…千波!」


私を見つけて、パアッと顔を明るくしその後でもなんで?どうして?と首を傾げるさつき。そのころころと変わる表情がやっぱり好きだ。


「忘れ物取りに来てさ」

「そうなんだ…びっくりしたー」

「さつきはどうしたの?こんなところで」


こんなところ、と言うのは私とみどが昼食をとっているのとはまた違う中庭。


「洗濯物を取り込みに来たの。そしたら赤司君に呼び止められて…あー!そうだ、千波!」

「ん?なに?」


赤司君とやらはさつきの後ろにいる赤い子だろう。目があったら微笑まれたので一応頭を下げておく。
彼の名前は何度かさつきやみどから聞いたことがある。なんだっけ、確か先輩を差し置いてバスケ部の主将になったとかどうとか。で、学年首席の子だ。


「千波料理出来るよね!?」

「…まあ、それなりに」

「お願い!」


夕飯作って!


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