桃色のさらりとした髪をブラシで梳いて頭のてっぺんで一つに縛り、くるくると巻いてピンで留める。そこに私と色違いのシュシュをつければ完成だ。


「うん、似合ってる」

「可愛い!でも本当にいいの?これ、貰っちゃって」

「うん。私のこれと色違いだけどそれでもいいなら」

「色違いだから嬉しいの!それにこれ、千波の色だもん」


私の色?
さつきの言葉に彼女の頭のてっぺんに鎮座するシュシュを見る。
淡いオレンジとアイボリー。私はこんな優しい色じゃないとおもうけど。


「千波は日だまりみたいなイメージだから」

「初めて言われた。自分的には青とかなイメージだけど」

「確かに青もあうけど…青っていうか空色かな」


そんなこと今まで言われたことなかったから少し気恥ずかしい。そんな人間じゃないんだけど。
ああでもさつきとは始まりがあれだったから美化されちゃってるのかもしれない。


「あ、再来週からテストか…部活禁止になっちゃう」

「ああ、そんな時期だね」

「千波この間2位だったんだっけ?」

「…なんで知ってるの?」

「えへ」


誤魔化されないぞ?

うちの学校は成績を貼り出したりしないし公表もされないのに。この子の情報収集能力が凄いのは知ってるけどそういうことに使うものじゃないと思うんだ。


「で、でも本当に!ミドリンより上とか凄いよ!」

「ミドリン?」

「あ、知らないよね。バスケ部の緑間真太郎君っていってね、」

「ミドリン…」


そんな呼び方されてるのあの子やばい笑いそう。ミドリン…ミドリン…!今度呼んだら怒るかな、怒るよね、それもまた楽しい…いやいやいや。


そんな会話をしたのが昨日のこと。


「みーどりん!」


なんとか辿り着いた第二音楽室で既に待っていた親友に後ろから声を掛ければバッとこちらを振り返り「その呼び方は止めるのだよ」と不快感をあらわにする。どうでもいいけどそのうさぎのぬいぐるみは…ラッキーアイテムですか。


「ごめんて。つい」

「…桃井か」

「うん。成績の話でみどの名前が出てさ」


面白かったから、と説明すればみどは心底嫌そうな顔をするみど。

やっぱり嫌なのね、その呼び方。


「まあ、からかった私が言うのもあれだけどこの場所教えてくれたのさつきだしさ」

「それとこれとは関係ないのだよ」


うーん、確かに。

苦笑しながらみどの正面に座りお弁当を広げる。今日のメインはスコッチエッグだ。


「その頭についているのは…」

「ん?ああ、シュシュ?」

「桃井とお揃いらしいな」


聞けば昨日の放課後さつきが自慢して歩いていたらしい。なにそれ可愛い。そんなに喜んでもらえてたとは。


「親友の色なんだと笑っていたのだよ」

「まじかー。あ、でもね」


言いながら髪を結っていたシュシュを外しみどに見せる。


「これ、みどとさつきの色なんだ」


緑と桃色のストライプ。そして僅かに入っているアイボリーはさつき曰わく私の色で。


「まさに私のためのシュシュだと思わない?」


へらっと笑う私に僅かに顔を赤らめるみど。
このシュシュは私の宝物、だ。



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