黒に近い藍色の外壁、広めの庭。

広い玄関に茶色と白で統一された家具。リビングには大きなテレビとふかふかのソファー。
対面式のキッチンは収納スペースが充実していて更にはオーブンやレンジ等調理器具も豊富。

私達にそれぞれ与えられたのは二階の部屋。一番奥がきよくんでその隣が私。
二階には他にトイレやテラス、客室がある。

自室は、広めなんじゃないかと思う。前のマンションの部屋より広いし。
勉強机と大きな本棚、ベッド、テレビ、テーブルに座椅子、いくつかのクッション。
チェストやカラーボックスのおかげで収納も困らない。

テレビはリビング用に新しくものを買ったため元の部屋にあったものを貰ったのだ。
きよくんの家のテレビは古かったため捨ててしまったがその内嫌でも設置されることになるだろう。
理由は追々。

小学生の部屋にしては落ち着きすぎているとゆうなさんに言われたけど自室は落ち着ける空間というのが第一だからいいと思う。多分ずっと使えるし。


「に、しても…」


土地を買って家を建てて家具やなんかを揃えて、


「これで半年で離婚とか言ったらわらえないな」


ゆうなさんには幸せになって欲しいから父が嫌になったらさっさと別れてほしいとは思うけども。

そんなことを考えながら自室の片付けを粗方終えてリビングに行けば既に私以外の三人が集合していた。


「お片付け終わった?」

「うん。そんなに荷物なかったから」

「何か足りないものあったらすぐ言ってね?」


ゆうなさんの言葉に頷いてからきよくんの隣、ゆうなさんの正面の席に座ってゆうなさんがいれてくれたお茶を飲む。…美味しい。


「それにしても助かったわ。家電とか、最悪後から少しずつ揃えるつもりだったから…でもなにも全部新品にしなくても…」

「いや、これは…」


父が私の方をちらりと見る。
それにつられてゆうなさんときよくんの視線も私の方に向けられた。


「洗濯機と乾燥機と加湿器と除湿機と…ミキサーとオーブンレンジ」

「?」

「全部福引きと懸賞であてた」


いえい、と無表情のままピースを一つ。

ぽかんとするきよくんとまあ、と口元を押さえるゆうなさん。


「そして一応全部最新の型」

「あてた、って…」

「方向感覚には見放されてるかわりに福引きと懸賞とかの運には恵まれてるみたい」


ただし必ずしもほしいものが当たるわけではないし大体の場合福引き、懸賞、抽選以外だとあたらない。それだけで十分だけども。


「お金もあんまりあたらないけど商品券は結構あたるよ。オーブンレンジやミキサーはそれで買った」


だからお金はそこまでかかっていない。というかほとんどかかっていない。


「俺も知らなかったんだけど、たまたま電機量販店の福引き券を二枚貰ってやらせてみたら…」

「洗濯機と乾燥機、除湿機と加湿器でセットだったんだよ」


開店セールとかなんとかで。
ちなみに商品券は前からちょこちょこあてていたやつだったりするのだ。


「でもお金はあたったことないかも」

「いいんだかわりいんだなわかんねーな」

「ね」


呆れたようなきよくんの言葉に同意しながら、お茶を啜った。


「婚姻届、出しに行くんだよね?」

「そうね…そろそろ行きましょうか」

「ああ」

「俺ら適当に食うからなんか食ってくれば?」


時刻は16時30分。届けを出してそのままデートでもしてくればいい。
そんな私の考えと同じことを思ったらしいきよくんがそれをゆうなさんに告げる。


「でも…」

「私達なら大丈夫だよ。
新しいキッチンも使ってみたいし…ちゃんと戸締まりもするからゆっくりしてきなよ」

「そう?…じゃあ、お言葉に甘えようかしら。ね、俊之さん」

「ああ」



仲良く連れ立って家を出ていくゆうなさん達を見ておもう。


「(本物の家族みたい)」


これから"みたい"じゃなくなって、本物って言えるようになるのかな。
…なれれば、いいな。




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