それならあの部屋は?とさつきに紹介されたのは第二音楽室。

そこなら教室から近いし人もあまり来ないからとのこと。


「でもどうしたの?人が来ない場所だなんて」

「一緒に食べる友達があまりうるさいとこ好きじゃないからさ」

「そうなんだ。その友達って違うクラスの子?」

「うん。今度紹介するね」


まあ紹介しなくても知ってる人間だろうけども。
友人ですって紹介したらこの子はどんな反応をするだろう。きっと凄く驚くだろうな。


「…千波はその子とお昼食べる方が楽しい…?」

「なに、ヤキモチ?」

「う…だってー」

「かわいい。
その友人はあんまり口数が多い方じゃないから楽しいって言ったらさつきと食べる方が楽しい。
向こうの子はどっちかっていうと一緒にいて落ち着くかな」


だから今のさつきとの昼食が3日、みどとの昼食が2日というのはどっちも大切な私にとっては贅沢な状況だったりする。


「私も千波大好き!」

「…あれ、そういう話だっけ…私もさつき好きだけど」


さつきはたまに話がぶっ飛ぶ。
頭はキレるんだけどなんかちょっとずれているところがあるのだ。そんなところも可愛いけども。

そんな、もう一人の親友が聞けば心底呆れるようなことを考えながらスケジュール帳を取り出し来週の火曜日の欄に第二音楽室、と書き込んだ。







部活をやっていない私の放課後は殆どなんにも拘束されていない。いつもは大体いったい家に帰ってからまっすぐスーパーに向かい買い物をし、家に帰って夕飯を作ったり洗濯物も取り込んだりと家事をこなして過ごすけれど今日は違う。

商店街に出来た新しい雑貨屋。スーパーに行く前にそこに寄るつもりなのだ。

雑貨屋は好きだ。というか雑貨が好きだ。そして家具やインテリアも好き。雑貨屋や本屋に入ると何時間でもいれてしまうのでよくにぃや幸くんに呆れられてしまうくらい。


「(お、可愛い)」


新しく出来たといえどあまり学生がうろつかない商店街の中にひっそりとあるこの店は人で溢れかえることもなく程よく静かな空間でとてもいやすい。
店の外見も内装も凄く可愛くてすぐにお気に入りの店になった。

そんな店内を特に何を目的にするでもなく歩き回る。
ペンダント、髪留め、ピンキーリング…色々なものに惹かれながら手に取ったのは淡いオレンジとアイボリーのストライプ模様のシュシュ。色違いであるライトグリーンと淡い桃色のストライプのシュシュとセットになっているもので、シンプルだけどとても目が惹かれた。


「(桃色と、グリーン)」


まるで私のためにあるような組み合わせだ。
ああ、ならもう片方は桃色のあの子にあげよう。
誰かと色違いなんて今まで意識して持ったことなかったけどあの子とならそれもありだと思ってしまうあたり本当にベタボレだ。


レジでお金を払い一緒に買った腕時計を左手首に、シュシュを適当に耳の下で纏めた髪につけて帰路につく。
今日は金曜日だから次にあの子に会うのは休み明けの月曜日。
あの子はどんな反応をするだろうか。




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