なんとかかすがさんを宥め口論を止めればかすがさんは主様のところへ帰らなければならないと帰ってしまわれた。

別れの際に寂しいと思ったのが顔に出てしまったらしく「そんな顔をするな、すぐ会える」と微笑んで。

そのことに照れながら私の足にしがみつくシノの頭をくしゃりと撫でた。


「あのね、シノね、ねーさまのおててすきー」


私の手をぎゅっと握りそう言うシノにきょとんとする。


「どうしたの?急に」

「シノが、ねーさまのおててはまほーの手なのって言ったらね、こすけさまがすてきねーて。それでね、ねーさまのおててすきなんですねって」


シノね、ねーさまのおててだいすきなの、
はにかみながらそう笑うシノに胸がきゅん、と高鳴った。


「シノちゃん、なんで依ちゃんの手は魔法なの?」

「だって、おくすりとか、ごはんとか、おりがみとかもね、いっぱいつくっちゃうの。
それでね、ねーさまがあたまなでてくれるとシノ元気になるの。たいのたいのけー!ってやると、たいのなくなるの。だから魔法のおてて!」


いつの間にこんなに長文を喋れるようになったんだろ。いつの間にこんなに…

シノをぎゅっ、と抱きしめて気付いた。



「シノ、もしかして熱ある?」



え!?っと猿飛様が声をあげる。
抱き締めた時の温度がいつもより高い。
脈略がない話をしだすのは子供だから普通のことだけども普段話さない長文を話したのは熱でテンションがあがっていたからか。

こつん、と額を合わせればやっぱり高い温度。


「大丈夫なのか?」

「慣れない環境に疲れがたまったのでしょう。昨日も一日の大半を寝てましたし…他に症状もないようなのでゆっくり休めば明日には下がります」

「あー、依ちゃんと一緒にいれるのが嬉しくてずっとはしゃいでたしね。旦那もよく熱出してたよ」


子供にはよくあることだ、とシノを抱え立ち上がる。
首に回される腕が、とても愛おしい。


「依」

「はい」


それじゃあ部屋に…という私を政宗様が呼び止める。


「看病される人間はまとまってた方がいいだろ。ここに寝かしとけ」

「な…!政宗様!」

「Ah…病人がいるんだ。大声出すな小十郎。
別に病じゃねぇならうつらねぇし一緒に寝るわけじゃねぇんだからいいじゃねぇか」

「なりません。いくらシノが幼いとは言え男女が同じ部屋で眠るなど…」

「シノ、お前はここで俺と一緒に寝るのいやか」


片倉様のお言葉を無視しシノに問い掛ける政宗様にシノはきょとんと首を傾げた。


「ここで寝たら依もずっとここにいるぞ」

「ねーさま、一緒…」


シノは私と政宗様を交互に見て、それからこくんと頷く。


「シノにいと寝るー」

「あ、こら、にいじゃないでしょっ」

「いい、俺がそう呼ぶように言ったんだ。それより猿!ここにシノの布団持って来い」

「俺様猿じゃないんだけど。っていうか勝手に決めないでくれる?」

「あ、では私が…」

「そうじゃなくて!そっちじゃなくて!」


なんだかさっきから猿飛様はずっと叫んでばかりな気がする。


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