「避けろ!」


聞こえた声と視界に映った此方に飛んでくる"何か"にとっさに顔を守るよう右手を出しながら体を避ける。遅れた左腕にかすったその"何か"は、クナイ。


「シノ!」


事態を把握すると同時にシノの名を呼び庭を見れば政宗様がシノを庇うように胸に抱き、その腕から血を流していた。


「政宗様!」


片倉様が政宗様に駆け寄る。
敵は忍、猿飛様を初め、何人かの忍の方が飛んでいくのが見える。


「シノ、いい?ちょっとねーさま達やることがあるから部屋に帰ってなさい」

「ねーさま…?」

「振り返らないで、まっすぐ。さっきまでお館様とお話していたお部屋、わかるね?走って。すぐに」


シノは私の言葉に戸惑いながらもこくんと頷き言われたとおりにまっすぐ部屋に走って行った。


「依殿、傷が!」

「私は、大丈夫です。
それより政宗様が…」
そう言って政宗様を見ると政宗様はシノが去るのを待っていたかのようにガクンと崩れ落ちた。


「政宗様!」

「政宗殿!」


片倉様が必死に腕の止血をなさっている、けど、もしかして


「少し失礼します!」


政宗様の体を起こし止血した腕を見、それから顔を見て、
真っ青な顔、痙攣している体


「毒…?」

「なんだと!?」

「誰か!薬師を!」


幸村様が叫んでいるのがわかる。けど、腕を掠っただけでこんなになる毒。薬師を呼んでも…


「解毒の薬…」

「依殿?」

「薬があります。私の荷物の中に…正直、これだけ強い毒に効くかわかりません。じいさまに教わって調合した解毒薬…可能性は、あります。けれど私はそれが毒ではないと証明する手段を持っていません。信じて、いただけますか?」


本来は薬師や信用のおける忍が渡す薬以外は飲まれない立場のお方。会って間もない私を、信じて下さいなんておこがましいことなのはわかっている。けれど、

話すことも出来ず脂汗をかきながら苦しむ政宗様を見る。
「時間が、ありません」


早く、早く処置しなくては手遅れになってしまう。それだけは、それだけは避けなくては


「…わかった」


片倉様は頷く

「お前を信じよう」

「…っ、ありがとうございます!薬を取ってきます。誰か水を…!」


部屋に走り、薬箱を掴み庭に戻る。手渡された水と薬を政宗様の口に。
弱々しく、けれどしっかり飲み込まれたのを確認し、患部を看る。

痛々しい傷に眉をさげながらもその傷を何度も何度も水で洗い、それから毒消しの薬を塗布した頃には荒々しかった息も少し落ち着いて来てらして、それを見て少しだけ安心する。


「政宗様を、お部屋に、水を出来るだけこまめに、それから、沢山…」

「依殿!?」


視界がクラクラする。左腕の傷を忘れていた。


「だいじょうぶ、です。こっちは毒なかった、ので…はやく政宗様、を…」

「…ああ」


片倉様が政宗様を抱き上げ走って去られる。
私は腕の傷を押さえながらよろよろと座り込んだ。


「依殿!?…っ失礼いたす!」

幸村様が私に駆け寄り袖をまくしあげた。


「………っ」


幸村様が息を呑むのがわかる。
…ああ、やっぱり、


「…とにかく止血を、」


私の薬箱に入っていた布を私の腕にキツく巻き、止血をしてくださる幸村様。


「傷の、薬は?」

「…そちらの、赤い入れ物の…」

「こちらだな」


優しく塗り込まれる薬は少しだけ傷にしみ、けれどじんわりと暖かかった。


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