意識を失う直前のことは、実はよく覚えていない。
だけど確かに私は死んだのだと思う。
ならば、この状況はなんだろう。
「えっと、」
「どちら様…?」
目の前には十代半ばほどの少年。
現在地は…どこだろうか。
見渡す限り電化製品は蛍光灯とストーブ、扇風機(季節感が全くない組み合わせだ)、掃除機は無造作に置かれ部屋の真ん中には卓袱台がちょこんと置かれている。
「ここは、あなたの家?」
「え…っ、あんたの家じゃ…」
お互い顔を見合わせ首を傾げる。
「私はちはや。あなたは?」
「俺は大和。高二」
高校生か…ふっ、若いな…ってなにキャラだ私。
取りあえず状況を整理しようと立ち尽くしていた大和君を座らせ鞄から紙を取り出しまとめて行く。
まず第一にここは何処か。
これは二人ともわからないため不明としておく。
次に此処に来た経緯
私は大学の敷地内に暴走トラックが入り込みそれにひかれ恐らく死亡したはず。
大和も自殺をしようとした青年を助けトラックにひかれたらしい。こちらも死亡した筈とのこと。
三つ目にこの家のこと
取りあえず体を拘束されてはいない。部屋に鍵も掛かっていない。家の中には先ほど上げた家電の他には台所に冷蔵庫とレンジ、オーブン、コンロ、その他調理器具が一通り。他の部屋には布団が何組かと救急箱、薬草の本と沢山の包帯。お風呂はそれなりに広めで追い炊き機能あり。
あとは着物(何故着物?)やタオルがあったりしたくらい。
家事態は割と古風、というか田舎のおばあちゃんの家みたいな、そんな感じ。
家の外に出たもののここは山奥らしく辺りは山、山、山。
もう日が暮れだしていることから探索はまたの機会にしよう。
また、家のすぐ裏には蔵みたいな物もありそこには沢山の野菜と米があった。
で、だ。
「「結局ここはどこなんだろう」」
「死後の世界とか?」
「え、天国ってこんな庶民的なの!?」
「庶民的かどうかは置いといて…それは流石にないか…」
うーん。
二人揃って首を傾げる。
「ま、なんとかなるか」
「なんとかなるかー」
「…ぷっ」
不意に聞こえた第三者の声…というか、吹き出した音にそちらを見れば先ほどまでいなかった筈の見知らぬ男が必死に声を殺して笑っていた。
「誰…?」
「不審者か?」
「ち、ちげー、よ…!あはははは、普通こんな時にそんな楽観的でいるか!?ははは!」
まぁ、確かにね。
見知らぬ家に見知らぬ少年と二人きり。まわりは木々に囲まれ隔離された状態。そして何の手がかりもなし、と来たら普通はもうちょっと混乱したりするかな。
でも死んだはずなのに生きている時点でなんかなにが起きても変じゃないような、そんな気がする。
「はー…笑った笑った。さて、取りあえず自己紹介でもするか。
初めまして、神様です」
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