「じゃあニホン?は王政国家ではないのか…」

「はい。こっちの言い方をすると…共和国、が一番近いでしょうか。天皇はおられますし絶対の存在なのですが政治的な実権は国民が握っています」

「成る程…では国のリーダーはどうやって?」

「それは…」


簡単に食事を済ませた後は本来の目的である国の話。
は、いいんだけど、…あまり政治には詳しくないので深くつっこまれたらどうしようか。


「成る程、面白いですね」

「立憲君主制、か…」


こちらの会話に加わっているのは主にシンドバッド王とジャーファル様、それからスパルトス様。
他の三人は既に酔っ払っており、たまにスパルトス様がそちらに巻き込まれている。


「法律もこちらと違うんだろうな」

「そうですね…法律は本当に山ほどあって私達も把握しきれていないのですが…そうですね、例えば法律上、大人…成人とされる年齢は二十歳以上。なので二十歳以下だとお酒を飲んではいけない、とか」

「えー、そうなの!?」


じゃあピスティは飲んじゃ駄目ね
ガキはジュースでも飲んでろー!
ヤムとシャルのバカー!

そんな三人の会話に笑いながら自分のお酒に口を付ける。
…ああ、美味しい。


「ん?ならすずりもお酒は飲んじゃいけないんじゃないか?」

「え?…いえ、二十歳はとっくに過ぎてますが…」


不思議そうに私を見るシンドバッド王にこてんと首を傾げそう言えば「「え?」」と何故かジャーファル様まで首を傾げる始末。


「…何歳に、見えますか?」


ひくり、と頬をひきつらせながら訊ねれば「ピスティと同じくらいかと…」「いえ、ピスティよりは年上でしょうけどせいぜい20歳くらいじゃ…」という解答。


「そんなに幼いかな…」


頬を軽く引っ張りながらピスティとヤムを見る。


「確かに見た目は若いけど中身はむしろ大人びてるくらいだよ」

「そうよ、ピスティと比べたら全然」

「―まあ、原因はなんとなくわかるけど…」


そうか、まだ十代に見えるのか、…いやいや、まさか。


「これでも22歳なんですが…」

「え…」

「んー、ここに来たばかりの頃、声が出なくてジェスチャーや拙い筆談で過ごしていたので幼い印象になってしまったんですかね?」


あの頃書いた文を見ると片言なんてレベルじゃないし、ジェスチャーはどうしても幼いイメージになる。
シンドバッド王とジャーファル様は特に片言+ジェスチャーで接した期間が長かったから幼い印象でインプットされてしまっていたのかもしれない。

聞けばスパルトス様は同い年でシャルルカン様は一つ年下になるらしい。
ヤムは一つ年上だったはずだしマスルール様は確か二つ年下だから、みんな年が近いのか。


「あ、あとは憲法の三原則というのがあって、"国民主権""基本的人権の尊重""平和主義"がこれにあたります」

「人権?」

「人間が人間として生まれながらに持っている権利のことです。
不当な暴力をふるわれたり、差別をされたり、理不尽な扱いをうけたり…奴隷が一番わかりやすい例でしょうか…」


奴隷には人権なんかない
奴隷は人間じゃなく物だ
そんなことをいう人もいるくらいだ。


「平和主義というのは?」

「私の国は戦争を放棄してます。刀…剣なんかも規制されていて、一般人は所持することを許されません。それでも勿論殺人事件なんかはありますけど…とても平和な国でした」


盗賊やなんかも(殆ど)いないし、戦争なんか無縁で…悪く言えば平和ボケした国だった。


「とても良い国だな」

「そうですね…でも同じくらいこの国もいい国だと思います」


あたたかくて、笑顔が溢れ出て、優しい国。

*← →#
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -