すずりみたいな助手がいたら実験がもっともっと捗る思うんです!
あー!ずるいヤムライハ私もすずり欲しい!
ピスティは頭をつかう仕事殆どしないじゃない!
私の方がすずりと能力似てるからお手伝いしてもらえるもん!


―いい加減にしなさい!


当人を置いて交わされていた言い争いはジャーファル様の一喝で収束を迎えた。
というかピスティ様はいつからいたんだろうか…。


「「だって…」」

「だってじゃありません!」

「あの、私はそんな大した人間じゃないので…」


どこをどう間違えたのかひどく過大評価されてしまっているようだ。
マッサージや動物関係はともかく他は人並みの能力しかないのに。あ、計算は確かに得意だけども。


「ははは、ピスティもヤムライハも彼女を随分気に入っているんだな」


のんきに笑っているシンドバッド王に2人は私は友達なんだと言って下さった。
それが嬉しくて、少しだけ照れくさくて。顔を赤らめ俯いた私にシンドバッド王が笑ったのが見える。

ピスティ様とヤムライハ様に会ったのはこの国に来て6日目の夕暮れだった。
自由に歩き回っていいと許可が出てから直ぐのことで、庭でラノと戯れていた私に2人が話しかけて下さったのが最初。

やっと文章を書けるようになってきたばかりの私に2人は優しくしてくれて最後には友達になろうと言って下さったのだ。

この世界に来てから友達なんてラノくらいしかいなかった私はそれに泣きそうになったのを覚えている。


「しかしそうだな…喉も大丈夫な様だし、いつまでも居候というのもな。
ピスティやヤムライハとも友人になったようだし、何より君の国の話にも興味がある。よかったら食客としてこの国に残ってくれないか」


そう言って微笑むシンドバッド王にゆっくりと頭を下げた。
答えなんて、最初から決まっている。


「今まで受けた恩を返すため、私に出来ることがあるならばこの国に貢献させてください」





「得意なこと、ですか?」

「ああ。武術や学問、なんでもいい」


食客になるにあたりなんの食客として置いてもらうかを決めることになった。
ここ、シンドリアには沢山の食客がいてそれぞれ魔法や武術、学問など自分の専門分野に関しての研究や訓練をしているのだという。


「私は…マッサージなら専門的に勉強していましたので得意です」

「ほお、マッサージか」

「あとは計算も得意だよね!」

「動物とも話せるわよね」


一番得意だと言えばやっぱりマッサージ、と答える私に興味を示すシンドバッド王、それから私のかわりに私が得意とするものを答えるピスティ様とヤムライハ様。


「ふむ…そういえば詳しい君の能力を聞いていなかったな」


そう言って私を見るシンドバッド王に小さく頷いて口を開く。


「能力としては動物と会話…というか意志の疎通を出来るというのが正しいかもしれません。
ただピスティ様のように全ての動物と友好的になれるわけじゃなくて…相手の性格や知能指数によって異なります」

「詳しく言うと?」

「例えばラノはとても頭がいいので私の言いたいことだけでなく人間の言葉は大抵理解してくれます。それから自分の言いたいことも文章にして伝えられるので人間と話をしているのと同じように会話が出来ます。
動物と会話をするときは自分の額と相手の額を合わせるのが一番的確に出来て、相手や自分の見た映像を共有することも場合によっては出来ます」


例えばこんなやつがあっちにいた、とかこういう物を探しているんだ、と映像で伝えられる。


「ただこれらは相手に伝える意志がなくては出来ないし、それは私に関しても同じです。
一応、動物に好かれやすい体質ではありますが極度の興奮状態だったり警戒心が強いと…。
それから私がお願いしてもいうことを聞いてくれるかは相手の性格にも変わってきます」

「つまり無理にいうことを聞かせることはできないと」

「はい。後は…動物によって知能指数が違っていて、本能が占める割合が多い子なんかは簡単な感情しかわからないことがあります。
ピスティ様のようにみんなと仲良くなれれば良かったんですけど…」

「私は殆どお話出来ないからすずりの能力が羨ましいよ?」


足しで2で割ればいいんですけどねー、と2人で笑う。

だから私と組めばきっと最強だよ!というピスティ様の言葉にまたヤムライハ様が噛みつくのだけどそれは割愛しよう。


「ラノは伝達も出来るんだったな」

「はい。試しに教えてみたら出来るようになって…」


行ったことある場所、更に知っている人にのみだけども十分ではないかと思う。


「そういえばこの間果物を届けてもらったわ」

「そうなんですか?
うーん…侍女の方がよく私に、とラノを通して果物を下さるんです。
きっとヤムライハ様が前に好きだと言ってらしたのを覚えてたんでしょう」

「えー、ヤムだけずるい!」

「以前ヤムライハ様に怪我を治していただいたことを感謝していたのでお礼のつもりだったんだと思います」


初めて会ったときラノは翼を負傷していて、それをヤムライハ様が治して下さったから。

*← →#
「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -