シンドバッド王とジャーファルさんを振り返って頭を下げる。


「"お仕事の邪魔、ごめんなさい"」

「いや、気にしなくていい。それよりラノはなんと?」


シンドバッド王の言葉に、なんて返したものかと悩む。

それでも言わないわけにはいかないので少し悩みながらペンを走らせて、シンドバッド王に見せた。


「"私怪しい、わかる。だから怪しくない、見せた"」

「…どういう意味ですか?」


ジャーファルさんが顔を顰める。


「"手紙のやりとり、疑われるの知ってる。だから中身見せようとした"」

「…つまり、君が疑われる前に怪しいことは書かれてないと俺たちに見せようとしたわけか?」


シンドバッド王の言葉に答えるようにラノが小さく鳴いた。

ただでさえ怪しい私。手紙のやりとりなんてしようものなら怪しまれるのは明白。
だから手紙を出す前にシンドバッド王に確認してもらったし、ラノもそれを見ていた。
それ故にこういう行動に出たわけで…


「では袋を受け取った後立ち去らなかったのは、私達が中身を見るのを確認するためだったわけですね」


また、ラノが一鳴きして肯定を示す。


「本当に賢いな、君は…」


それに頷くのは私だ。
ラノは賢い。本当にびっくりするくらい。


「だが中身の確認は必要ない」

「シン!?」


きっぱり言い放ったシンドバッド王とそれを咎めるように声を上げるジャーファルさん。


「どっからどうみても怪しくないだろう」

「どっからどうみても怪しいでしょう!?
…いえ、そこまでは言わなくても完全に信じるには早いです!」

「大丈夫だ、すずりは危なくない」


本人の前で言い合う内容か…と傍観していた私はシンドバッド王の言葉にキョトンとする。

この人は何を根拠にそんなことを言うのだろうか。そりゃまあ、確かに筋肉とかはないけど。

シンドバッド王はそんな私をまっすぐ見つめにっこりと笑った。


「だからこれは君だけが読むといい」


そう言って手渡された袋を受け取り、そっと胸に抱きしめる。

―なんで、お酒の匂いがするのかな?

顔がひきつるのを感じながら袋から手紙を出してバッと開く。

手紙には確かに良いことが書いてある。
無事で良かったとか、いつでも帰ってきなさいとか、そういう、本当に泣きたいくらい嬉しいことが書かれている、けども。


「(酒臭い)」

「…どうかしましたか?」


顔をひきつらせている私にジャーファルさんが怪訝そうな顔で訊ねる。

無言で手紙を手渡す私。
受け取るジャーファルさん
不思議そうな顔をするシンドバッド王。


「…酒臭い」


くん、と匂いを嗅いで顔を顰めるジャーファルさんに、なんだか気が抜けてしまう。


「(なんだろう、なんか、もう、本当…)」


無性に笑えてきて、けど声は出せないから必死にそれをこらえる。
きっと私の無事を知ったおじさんはすぐに返事を書いてくれて、そのまわりで他のメンバーが私が無事だったことを理由に酒盛りを始めたのだろう。そして誰かがお酒をこぼして…きっと書き直すのが面倒だったのかな。

もう、なんて人達だ。


「(良いこと書いてあるのに台無し…)」


我慢出来ずにくすくすと笑う私を2人が驚いたような顔で見てたなんてことも知らず、おじさん達のことを思いひとしきり笑い続けるのだった


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