小さい頃から周りから頭一つでるこの身長が嫌で、気が付けば目立たないように目立たないようにと気をつける癖がついていた。
高校三年生になった今、身長は170cmをゆうに越え、周りもグンと身長が伸び私よりも大きな子は増えてきたけどそれは男子の話で。やっぱり私が目立ってしまうのが辛い。
「恋人の理想の身長差って15cmらしいよー」
「マジで?ってことはあたしは155cmだから170cm?えー、もっと大きい方がよくない?」
そんなクラスメート達の会話が聞こえる。
15cmだって充分だよ。私より15cm大きい人なんてなかなかいないんだから。
心の中で呟きながら黒板の文字を消していく。
高くて上の文字が消せない…なんてことがないのが悲しい。
文字を消し終え、日直だからと先生に頼まれた荷物を運んでいるとすれ違った人に「でか…」と言われる。
大丈夫、慣れてる。けど、やっぱりちょっと辛い。
「(小さくなりたい)」
無理だとわかっているけどついそんなことを考えてしまう。
「あんたは確かに身長もでかいけど乳もでかいし腰は細いしむしろモデル体系だって胸張ってりゃいいのよ!私なんて、私なんて…!」
いつだったか胸が小さいのがコンプレックスな友人にそう怒られたのを思い出す。
体系や体に関するコンプレックスは誰にだってあると考え始めたのはそれがきっかけだったように思う。
けれどだからと言ってコンプレックスがなくなるわけじゃあ、ないんだよね…。
「(あ、)」
前から歩いてくる三人組を見てふと足を止める。
「(バスケ部、だっけ)」
私より大きい男子が三人。一人は同じクラスの子だ。
ああいう人達と並べば変じゃないのかな?
少しだけ考えて、小さく首を振る。
「(結局釣り合わない)」
せめて、もうちょっと可愛かったらなぁ。
「あ」
そんなことを考えていたら私に気付いた笠松君が小さく声をあげ、それから少し戸惑ったように視線を泳がせ、意を決したように口を開いた。
「そ、それ」
「え?」
「…日直の、か?」
うん、と頷くと笠松君は「わりぃ」と小さく謝り持っていた荷物を半分以上私の腕から取り上げる。
あ、そっか。相方、笠松君だっけ。
「ありがとう」
「…いや」
俺の仕事でもあるし、なんて視線を反らしながら言う笠松君。
「見ろよ小堀、あいつ照れてるぞ」
「相変わらず女子が苦手だなぁ」
そんなチームメートの冷やかしにうるせぇ!と怒鳴る笠松君を見て女子が苦手なんだ、と納得。確かに女の子と話してるのなんて殆ど見たことないし、あってもぶっきらぼうだったりするから。
でもよかった、嫌われてたわけじゃないんだ。
「これ、資料室?」
「ううん、社準。すぐそこだから、お話ししてたなら一人でも…」
「いや、大した話じゃねぇ、から」
行くぞ、と照れ隠しかぶっきらぼうに言って歩き出す笠松君を慌てて追い掛ける。
笠松君は、優しい人だ。
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