本当にありがとうございました

そう言って深く頭を下げる。

先輩達はそれに少し慌てたようだけどどうしてもちゃんとお礼を言いたかったからそれが達成できて良かった。


「すずりちゃん、だったかしら?」

「はい」


私に声をかけたのはショートカットが素敵な女の先輩。


「その荷物は?」

「あ」


すっかり忘れてた…と足下に置いてい大きなバスケット(バスケットボールじゃくハイキングとかに持ってくカゴの方)を見る。


「あの、助けてもらったお礼に差し入れって思って…」


そう言いながらバスケットを差し出す。


「まさか…」

「手作りのお菓子とか!?」

「一応…ただその…」


猫口の先輩の勢いに押されながらも頷いて視線を反らしながら、「量が…」と一言。


「量?」

「作り出したら楽しくなっちゃって気が付いたら凄い量に…なのであの、もし甘い物が平気なら皆さんで召し上がってください…」


学校が終わってから一度家に帰ってお菓子を作り出したのはいいもののつい楽しくなってしまい気が付いたらテーブルの上に置き場がないくらい大量生産されてたお菓子を見て顔がひくりとひきつったのは数十分前のこと。それからいつもの調子でまあいっかと楽観視して持ってきたものの予想以上に部員が少なくて正直焦っている。本当に。


「火神君に何人いるか聞いたら20人くらいって言ったから大丈夫かなって思ったんだけど…」


どう見てもその半分くらいしかいない。


「ついに数も数えられなくなったんですか?」

「う、うるせぇ!」

「ほんっとバ火神ね…でも大丈夫。育ち盛りの男の子…しかも部活帰りだからこれくらいぺろっといっちゃうわ。それより中身は何?」

「本当ですか?良かった…あ、えっとバナナのパウンドケーキと蜂蜜のレモンのゼリーとかぼちゃの蒸しケーキ…あとは少ないんですけどごま入りのもちもちしたパンです」


ちなみにどれも簡単なものばかりだ。料理はするけどお菓子作りはそこまでしないから。


「うま!」

「うめー!」


そう言ってバクバクと食べてくれるみんなにホッと息を吐く。よかった、とりあえず食べれなくはないらしい。というかこの調子なら本当に全部食べちゃいそうな勢いだ。…特に火神君。


「あ、火神君これ明日までの宿題だって」

「げ、マジかよ…」

「ここの範囲の小テストやるからちゃんとやるようにってのと、それから担任の先生がなんか渡したいものがあるから明日の朝、部活の後でもいいから職員室まで取りに来なさいって」


先輩達へのお礼は済んだし黒子君と火神君への用事も終わったし…うん、もうやらなきゃいけないことはないかな。


「そういえばもうこんな時間ですが大丈夫ですか?ご家族とか心配…」

「あ、うちの両親今職場に缶詰め状態だから大丈夫。今、っていうか一年の大半だけど」

「缶詰め?」

「ふたりとも出版社の人間なんだよね」


しかも凄く忙しい部署らしく殆ど帰ってこれない上に帰ってきても大体ベッドに直行。
脱稿日はゾンビみたいになって帰ってくるような有り様だ。


「寂しくないですか?」

「病気の時とかはたまに…でも毎日うざいくらいメールくるから」


だから実際何日も会ってないとかって実感がないくらい。
ちゃんと愛されてる自覚はあるし。

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