「ふあ…」

「眠そうですね」

「あ、おはよう黒子君。昨日あんまり寝れなくて」


友人との電話の後に読み出した本があまりにおもしろくてつい一気読みしてしまった挙げ句ラストに感動して興奮がおさまらず寝れたのはたったの四時間だけだった。

それ故眠くて、眠くて。


「一限目は自習らしいので保健室で仮眠をとってきたらどうですか?」

「んー、そうする」


自習となったら教室はうるさくなるから寝れないだろうから黒子君の言うとおり保健室で眠らせてもらおうと思う。このままだと授業中寝ちゃいそうだから。

のそのそと立ち上がり教室を出る。
えっと、保健室は一階だっけ。

ボーっとする頭でそんなことを考えながら階段を降りていたその時だった。


ドンッ


「わっ」


肩にぶつかる衝撃と共に踏み外された足、宙に舞う体。



―――落ちる…!



襲ってくるであろう衝撃に目を瞑るがなかなかやってこないそれにああこういうとき時間がゆっくり感じるって本当なんだな…と考えすぐにそうじゃないと気付く。



体を襲った衝撃は地面に叩きつけられた時のそれではなく、それよりかはいくらか柔らかい、けれどしっかりとした硬さを持った熱。


「え…?」

「おい、大丈夫か!?」


恐る恐る目を開ければ黒と、白。
次に聞こえた声にばっと顔をあげれば見知らぬ人に抱き留められているのだと気付いた。
しかも私はその人に覆いかぶるようにしていると。


「え、あ、ごめんなさい!」


慌てて体を離せばやっとこさ状況を理解出来た。
私は階段を下りていて、そこに誰かがぶつかって
元々ふらふらしていた体は簡単に宙を舞い階段の下にいたこの人が受け止めてくれたんだ。多分。


「いや、それより怪我はないか?」

「大丈夫?日向、一応保健室に…」


私を受け止めてくれた人(多分先輩?)と先輩と一緒にいた綺麗な先輩の問いかけにこくこくと頷いて今自分が落ちた階段を振り返って見る。

私はまだ2段しか降りていなかったはず。
あんな、高いところから落ちたんだ。
もし先輩がいなかったら…

今更襲ってきた恐怖に体を震わせる。


「怪我は?」

「あ…だ、大丈夫です…」

「一応保健室行こうか。立てる?」


綺麗な顔の先輩が差し出してくれた手を取りゆっくりと立ち上がる。
少しだけ膝がひりひりしたけど傷にはなってなかったから大丈夫。


そのまま先輩達は保健室まで付き添ってくれて、私に怪我がないことを確認して帰って行った。

保健の先生がいないのをいいことにベッドに潜り込みながら先輩達の名前を聞いていないことを思い出して悶々としたのはそのすぐ後の話。


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