日誌を先生に提出し無事に日直の仕事を終わらせた私は真っ直ぐにその足を図書館へ向かわせる。
今日は当番の日じゃないけど新刊が入ると聞いて朝からわくわくしていたんだ。
図書館には生徒は殆どいなくているのは委員の子と勉強している人が数人。本の匂いに包まれた静かな空間がそこにあった。
「あ、牧野さんこんにちは。新刊入ってるよ」
「こんにちはー。それが目当てで来ました!」
司書のお兄さんと挨拶を交わしながら新刊コーナーへ向かう。
一度に借りれる本は三冊まで。だけど読みたい本はその倍ある。
「(どれ借りようかな…)」
大好きな作家さんの新刊と、昔から大好きな童話の新訳と…
あまりに真剣になっていたからか眉間に皺が寄っていると司書のお兄さんに笑われてしまった。
「あ、これ…」
見つけたのは一冊の写真集。
「写真、すきなの?」
「はい。この三冊にします」
写真集を入れた三冊をカウンターに置いてクラスと名簿を告げる。うちの学校の図書館はカウンターに名簿がありその名簿にあるバーコードと本の後ろにつけてあるバーコードをハンドスキャンで読み込み貸し出し、返却作業を行う。
中学まではいちいちカードに書き込まなきゃならなかったからこの方法は凄く楽だ。
借りた本を鞄に入れて図書館を出る。
途中体育館に女子生徒が集ってたけどなんだったんだろ。
…その疑問はその夜に解けた。
「きせりょうた?」
電話越しに聞こえた友人の言葉にこてんと首を傾げる。
『そう!人気モデルの黄瀬涼太が学校にいたの!なんかバスケ部に用があったみたいでね、すっっっごく格好良くてー…』
成る程、さっきのあれはその黄瀬涼太?とやらが来たことによう騒ぎだったのか。
バスケ部ってことはうちのクラス誰がいたっけ。
黒子君と火神君だけかな?私はよく知らないけど黄瀬涼太さんって凄く有名なのだという。へぇ…
『あんた本当にそういうの鈍いわね』
「だって…雑誌とかはたまに見るけど女性誌だし、なんでみんな男性モデルとか知ってるの?」
『だからそんだけ有名なのよ。っていうか格好いい男は無条件にチェックしなくちゃ』
「ええ…そんなもんなの?よくわかんないや」
あまり格好いい人とかにも興味ないし。
それからは30分くらい黄瀬涼太さんがいかに格好いいかを聞かされ電話はきれた。
携帯をベッドに放り込んで読みかけだった本を取り出す。
小さな女の子が主人公のこの話ははりねずみみたいに周りを近付けないことで自分を守る女の子と公園で出会ったおじいさんとの不思議な体験の一部が語られている。
ふわふわとした文面の中にたまにズキリと胸に刺さる描写があるその内容にどんどんのめり込み、逃れることが出来なくなる。
そうして気が付けば読み始めてから二時間が経過し、日付はとっくにかわっているなんていう事態に陥るのだ。
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