男鹿君により霧矢は追い払われ要君により全ては催し物かのようにまとめられ、学園祭は終了した。
なんだかもやもやすることもあったけどバレーも勝ったし退学もなくなったからいいとおもうことにする。
そんなことを考えながら由加ちゃんに返してもらった制服に着替えて学校を後に。はじめ先輩のジャージを脱ぐのが少しだけ名残惜しかったのは内緒だ。
「城山先輩大丈夫ですかね?」
「城ちゃんなら大丈夫だよ」
何を根拠に。
いや、聞いたのは私だけど。
「それにしても、今日は疲れました」
「お前は何にもしてねぇだろ」
「朝から千明ちゃんと由加ちゃんに捕まって洋服はぎ取られたり」
ひくりとはじめ先輩の顔が引きつる。
「城山先輩にびっくりしたり」
「あれは確かに」
「…霧矢にいらっとしたり?」
「いらっとしたっていうかキレてたよね、都ちゃん」
「だって…」
いらっとしたんだもん。
勝利に水を差した霧矢にも、自分が誤解してたことを知ったとたんに態度を変える三木君にも。
「しーろーちゃんっ」
相変わらず語尾にハートが付くくらいのテンションで夏目先輩が病室のドアを開ける。城山先輩、大丈夫かな。
▽
城山先輩の無事を確認して軽く雑談をし病院を出る。
空は赤く染まり三人の影が長く伸びていた。
家まで送るよ、なんていう夏目先輩の言葉に甘えながら三人で歩く帰り道。途中、はじめ先輩がヨーグルッチを買うために遠回りしたからいつもと違う道を通る。
「あ、ここ…」
立ち止まったのは川沿いの細道。
「どうしたの?」
「…ここ、はじめ先輩に初めて会った場所です」
確かここら辺にはじめ先輩達がいて、私はその横をびくびくしながら歩いていた。
「へぇ…じゃあ都ちゃんが落ちたのはこの川?」
「よく覚えてんな」
「あやうく死にそうになった場所を忘れるわけないじゃないですか」
いやでも忘れられないよ普通。
あれからもう半年か…いや、まだ半年しか経ってないのか。
「まさかあの時は半年後にこうやってはじめ先輩と婚約者になって一緒に歩いてるなんて思いませんでした」
本当、人生なにがあるかわからない。
「じゃあここは2人の思い出の場所なわけだ」
「とんだ思い出だな」
「それをはじめ先輩が言うんですか本当トラウマしかないですよちくしょう」
はじめ先輩だけは絶対に言っちゃいけないんだと思うんだ。
「あ、でも将来2人の子供を連れてきてここが出会いの場所だよって言うにはいいんじゃない?川沿いの道とかドラマチックで」
「うるせー黙れ」
「詳しい出会い方話したら確実にグレますよ子供はじめ先輩みたいになっちゃう」
「あ゛ぁ?」
「うう…」
す、凄まなくたって…
っていうかはじめ先輩顔赤いんだけどどこに照れたんだろ…子供?
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