そしてとうとうやってきてしまった学園祭当日。
中学までのものとは違い賑やかなそれを横目に見ながら登校したのは30分前のことだった。


そして私は今学校に来てしまったことを猛烈に後悔している。


「…なんつー格好してんだお前」


私を一目見てぶはっとヨーグルッチを噴き出したあとやっとこさ搾りだしたかのような声でそう言うはじめ先輩についに恥ずかしさの限界に達した私は半泣きになりながら夏目先輩の後ろに隠れた。

そんな格好、というのは体育館に入った瞬間に由加ちゃんと涼子さんに捕まりそれから連行→身ぐるみを剥がされそうになるといった経緯を経て着せられたこのチアガールの服のことだろう。私だって着たくなかった。着たくなかったけど…!


「制服もジャージも取り上げられちゃったんだから着るしかないじゃないですか…!」


ひとまず脱げと言われてシャツを脱いだまではよかった。
だけどそれを取り上げられるなんて。うう…


「あはははは!都ちゃんかわいい!」

「…爆笑しながら言われても…」


全くもって嬉しくない。

ジトッと夏目先輩を睨んでも笑われるだけだからなんか悔しい。


「にしても、意外とスタイルいいんだね、東海林ちゃん」

「え?」

「放っといたら姫ちゃん辺りにちょっかい出されるんじゃない?神崎君」


夏目先輩の言葉にはじめ先輩はジトッとこちらを見た後おもむろに手に持っていたジャージを私に投げつけた。


「うわっ」

「持ってろ」

「持ってろって、ええ…」


これは一応気をつかってくれたのだろうか。気を使えるんだ、はじめ先輩…
若干失礼なことを考えながらはじめ先輩のジャージを抱きしめるように持つ。


「(あ、はじめ先輩のにおいだ)」


はじめ先輩のジャージなんだから当たり前なんだけど、それがなんとなく照れくさくて、でも、少しだけ落ち着いて。


「…これ、羽織ってていいですか」

「おー、しっかり前も閉めとけ」


さっきからはじめ先輩と目が合わないんだけど今この状況下ではありがたい。だって、なんか恥ずかしい。


「ぶかぶか…」


やっぱり、はじめ先輩のにおいがして落ち着いた







「あー!なんで都ちゃんジャージ!」「かわいい…」「都ちゃんなんて惜しいことを…!ああでもそのぶかぶかなのもまた…」なんて騒がれながらもはじめ先輩のジャージを着たままに試合開始。
ちなみに端からゆかちゃん、ちあきちゃん、古市君だ。古市君きもちわるい。

試合は意外にも平和に(あくまで比較的、だけど)やや汚い手を使いながらもはじめ先輩達の勝利で終わった(城山先輩大丈夫かな…)。


…なのに


「はーい静粛に」


なのに


「クソ似合わねー事してんじゃねーぞ、男鹿!」



それに水を差すのは許さない



「…でも」

「都ちゃん?」


私たちは手出ししちゃ駄目なんだ。
あれは男鹿君と霧矢、それから三木君の問題だから。

例え今それに巻き込まれているんだとしてもだ。


霧矢の発言に自分の勘違いに気付く三木君。

三木君を庇うように帝毛の二人を倒す男鹿君。


男鹿君は三木君に言い訳もしないし、三木君を責めもしなかった。

ただ不器用に、彼を守って彼に恨まれたままだった。


「(不器用すぎるよ、男鹿君)」


今だって我慢してたのに三木君のために手、出しちゃうし。



「とっとと片づけんぞ…三木」



男の子って、なんかずるい



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