この間の件ではじめ先輩達は退学の危機に陥っているらしいと聞いた。
バレーボールで六騎聖に勝たないといけないとかなんとか…なんでバレー。
なんでか知らないけど妙に燃えているはじめ先輩達は元々の運動神経はいいためもの凄く強そうだった。
「ちょっと飲み物買ってくるね」
由加ちゃんにそう告げて体育館を出る。
自分の飲み物のついでにみんなにスポーツドリンクでも買ってこよう。そんなことを考えながら。
校舎内を一人で歩くことは例の屋上に行くこと以外なかったから正直緊張する。
絡まれたりするのも怖いけど主に迷わないかという意味で。
人もまばらになった校舎を歩きながらそういえば要君にも謝った方がいいかな、なんて思いついたその時だった。
「お嬢?」
なんというタイミング。
私を見るその姿が視界に入った瞬間思わずまわれ右をした私は悪くない。そのまま逃走を試みた私は何か固いものに行く手を阻まれ「ごふっ」と変な声をあげてしまう。
「いたた…」
何なんだもう、とぶつけた鼻をさすりながら顔をあげるとそこには嘗ての同級生がいて。
「大丈夫ですかお嬢!」
後ろに要君
前には三木君
「(あ、これ逃げられない)」
「鼻痛いん?鼻血出とらんですか?」
ぶつかっただけで鼻血出るとか三木君の体なんなのコンクリートかなんかで出来てるの…
それよりどこかに連行されているんだけどもこれどこに連れてかれてるんだろ…体育館に帰りたい。
「要君体育館戻りたい」
「駄目です」
「…なんで三木君が答えるの…」
ムスッとした顔をしているのは自覚済みだ。
三木君がはじめ先輩達に言ったこと聞いたし古市君にも事情聞いたけど私の一番嫌いなタイプだからしょうがないと思う。
要君に腕をひかれ連行されたのはとある一室。何室とかこの学校の生徒じゃないから知らないけどここに来る間聖石矢魔の生徒の視線が痛くてはやくどこかの部屋に入りたいって思ってたから少しだけ安心した。
だけど
「し、失礼しました…!」
部屋の中を覗いた直後私は再び逃走を試みた。…三木君に捕まったけど。
「(な、なんで六騎聖勢揃いなの…!?)」
いや、詳しくは知らないけど多分屋上にいた人たちだ。…ああ、逃げたい。
「お嬢、いくつか聞きたいことがあるんですが…」
「やだ。っていうか敬語じゃなくていいよ」
「そういうわけにはいきません」
なんていうかよくわからないけど要君は六騎聖で一番強くてかつ学校の生徒会長で、つまり生徒の中で一番権力がある人なんだろう。そんな人が石矢魔の生徒に敬語使うってここの人たちどう思うのかな。どうでもいいけど。
…基本的に私は身内以外には薄情な人間だ。
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