熱を出して暴走して回復後に死にたくなるこの悪循環をどうにか出来ないかな…そんなことをひっそりと考える。
城山先輩が大怪我を負ったあの日から三日。
熱はすぐに下がったもののみんなの前で啖呵を切ったことを考えると羞恥心やら恐怖やら後悔やらで学校に行くのが怖くなりずるずると学校を休み続けていた。
だけど
「とっとと歩け」
「神崎君、東海林ちゃんは小さいんだから歩幅合わせてあげなきゃ」
「ち、小さい…みんなが大きいんですよ…!」
朝食をすませぐだぐだしていた私のもとに現れたのははじめ先輩と夏目先輩の二人。
そのまま無理やり着替えさせられ(脅し、よくない)あれよあれよと言う間に鞄を奪われ学校へ行く道を歩かされ、今にいたる。
ちなみに二人への謝罪は顔を見た瞬間にすませた。光のような速さだったと自負するくらい速攻。怒られなかったのが逆に怖かった。
城山先輩は無事に意識を取り戻し暫く入院が必要なものの後遺症なんかは残らないと聞いたからとりあえず安心。城山先輩が怪我をしたときは本当に心臓が止まるかと思ったから。
「つーかお前あの眼鏡とどういう関係だよ」
「眼鏡?あ、要君ですか?」
要君…そういえば大嫌いとか言っちゃった気がする。
正直あまり記憶はないんだけど。
「要君は出馬八神流十六代目当主で、出馬八神流は代々うちの組と交流があるんです。
それで要君とも昔から知り合いで…ただそれだけです」
あくまで要君にとって私は東海林組のお嬢だから特別親しい間柄でもないし親しく出来る間柄でもない、らしい。
「たまに家に来るお兄さんくらいの認識だったんでまさか聖石矢魔にいるなんてびっくりしました」
「ふーん…あ、そう言えば東海林ちゃんさ、」
「はい」
「いつから神崎君のこと名前で呼ぶようになったの?」
夏目先輩のその言葉に思わず何故か家から少し離れた所で夏目先輩にもらったぬいぐるみ(ゲーセンで取ったらしい)(何故家で渡してくれなかったのか…)を落としそうになってしまう。
「わ、私はじめ先輩って呼んでました…?」
「うん。この前啖呵きったときねー」
あのときか…!別にいいんだけどなんとなく気恥ずかしくてあまり呼ばないようにしてたのに!
「ま、前言ったように同業者で、家族ぐるみで付き合いあるから…名字だとややこしくて」
「へえ、婚約者だからじゃないんだ?」
そんな言葉に今度こそぬいぐるみを落としてしまった。
「な、な…な…!?」
「あははは!いいリアクション!」
「な、なん、なんで…」
「この間東海林ちゃんが意識を失ったあと神崎君がね、」
笑いすぎて溢れたのであろう涙を拭いながらはじめ先輩に視線をおくる夏目先輩。
はじめ先輩は気まずそうにあらぬ方向を見ていた。
曰わく、
「意識失った東海林ちゃんをはじめ君が抱きかかえて連れて帰ろうとしたんだけど」
この時点で私ははじめ先輩をばっとあおいだ。
「出馬だっけ?彼が神崎君をとめて"お嬢とどういう関係なん?ただ利用してるだけなら手ぇ放しや"って言われてね、」
要君が言ったという言葉に驚きながらも嫌な予感がしてはじめ先輩の腕をガシッと掴む。
「それでなんて返したと思う?」
「なんて、返したんですか…?」
はじめ先輩が静止の声をあげているが聞く夏目先輩じゃない。
「婚約者ですが何か?って」
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