「な、なんのために城山先輩が無抵抗貫いたと思ってるんですか!」
突然怒り出す私に全員が目を見開いた。
「問題にならないようにだったのに、こうならないためだったのに、み、みんなのためだったのに、なんで、なんで突っ走るんですか!」
なんで、なんで、そればっかり。
もう考えすぎて頭が痛くなってきた。
「なんのために城山先輩が…!」
「東海林ちゃん…」
「し、城山先輩、血がいっぱい出て、全然目、覚まさなくて、き、傷だらけで、…それだけでいっぱいいっぱいで、悔しくて、なのに、は、はじめ先輩ひとりで乗り込んだっていうし、夏目先輩や男鹿君、邦枝先輩、も六騎聖相手にしに行ったって聞いて、み、みんなまであんな傷負ったらどうしようって」
ここに着くまでずっとずっと怖かった。みんなまで怪我したら、あんな目に遭ってたらって。
「ずっと、ずっと生きた心地しなくて、もう、もう、」
情けないけど涙が止まらない。
「もう、どんだけ心配したと思ってるんですか!」
私がこんなこと言える立場じゃないって、わかってはいるけど。
「さ、さっきの出来事は聞いたし三木君が言ったことは心底腹立つし、だから、き、気持ちはわかるけど、でも、
もう、誰も怪我しちゃやだ…!」
「お嬢…」
「か、要くんも嫌い、やだ、なんで傷つけるの?なんにもしてないよ?大人しくしてたよ?喧嘩、してないよ?脅したりしてないよ?なのになんで城山先輩が怪我しなきゃいけなかったの?なんで、なんであんなことされなきゃいけない、の?聖石矢魔に来たから?す、好きで来たわけじゃないのに、なのに、なんでこんな、」
「東海林ちゃん落ち着いて」
子供のように泣きじゃくる私に周りは困ったような、戸惑ったような顔をする。
わかっている、困らせてるのは。でも、止まらなくて
「…なんだあ?」
だから聞き慣れた低いその声が聞こえた時、不思議と混乱していた頭の中に風が吹いたような、そんな感覚がしたことにびっくりした。
「はじめ、先輩」
気を失っていた筈のはじめ先輩がいつの間にか目を覚ましこちらを見ていた。
「…また泣いてんのかテメェは」
「だ、誰のせいですか!」
ぶわっ、と一瞬止まった涙が再び溢れ出す。
「はじめ先輩が一人で突っ走るから、それで、あっさり返り討ちにされて怪我、するから、だから…!」
ただでさえいっぱいいっぱいなのにそんなことするから。
「が、我慢出来なくなっちゃったんですよばかぁ…!」
うう…バカ、アホ、はげちゃえ、うわああん、と悪態を吐く私に夏目先輩が苦笑しながら近づいてくる。
「あ、やっぱり熱あるよ東海林ちゃん」
「はぁ?またかよ」
「神崎君起きてからただのぐずりになったからもしかしてって思ったらやっぱりだったね」
「うう…せ、先輩達が心配かけるから、だから、それでいっぱい泣いて、いっぱい考えて、し、心配して、熱くらい出ますよ!」
頭がガンガンして視界はぐらぐら揺れている。
「もう…誰も怪我しちゃ、いやです」
次に目を覚ました時、私は自室のベッドの上にいた。
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