「は、はじめ先輩、城山先輩が!」
城山先輩が大怪我をした。
昼食をとっている時に聖石矢魔の生徒に絡まれた私と由加ちゃん、涼子さんを庇って、無抵抗で暴力を受けて。
由加ちゃん達が救急車を呼んでいる間私は半泣きではじめ先輩に電話をかけた。
はじめ先輩は、ただ「お前は城山についてろ」と言って電話をきった。
城山先輩について救急車に乗り病院まで行く。
「しろやま先輩、城山先輩ぃ」
なんで、なんにもしてないのに、大人しくしてたのに、なんで、どうして
血だらけの状態で処置を受ける城山先輩を見ながら頭の中をぐるぐる回るのはそればかり。
私は、いい子じゃない
へたれだけど、びびりだけど、だけど、やられっぱなしでただ黙ってられる人間じゃない
大好きな人が傷つけられて何もしないでいられるほど優しくない
だから
「竜崎さん、お願いがあるんです」
卑怯だってなんだって
私は私なりのやり方で報復してやる。
神崎先輩が城山先輩に怪我を負わせたあの生徒達のもとに乗り込んで六騎聖の一人に返り討ちにあったと聞いたのはその数分後だった。
久しぶりの全力疾走で体力はもう限界だった。
それでも足を止めるわけにいかなくて、ただひたすら屋上に向かって走る。
「古市君!」
屋上の入り口に隠れるように立っている古市君の名前を呼んだ。
「都ちゃん!?」
「は、はじめ先輩は?なつ、め先輩は…!?」
「お、落ち着いて!
神崎さんはさっき来たけど男鹿君に伸せられて夏目さんは多分無傷だよ」
「…よかったぁ…」
いや、よくない。よくないけど…
「ちょっと、行ってくる…」
「え!?危ないよ都ちゃん!」
古市君の静止を振りきって私は屋上に足を踏み入れた。
「夏目先輩!」
「東海林ちゃん?」
「け、怪我、怪我は…!?」
「大丈夫。無傷だよ」
夏目先輩の体をジッと見るけど確かに怪我は無さそうだ。
「ちょっとはやる気になったか?」
「せやなぁ…」
東条先輩と対面している関西弁の男性。あれは、
「ケンカやのうて死合いやったらいつでも」
ゾクッ
一瞬、彼を中心に風が吹く。
「だ、だめ!」
気が付けば私は声をあげていた。
「東海林?」
男鹿君が少し目を見開いてこちらを見る。
「お嬢…?」
そして、東条先輩と対面していた彼も。
「みんなに手、出しちゃ駄目」
「お嬢、なんでそんな連中と…」
「私も石矢魔だもん。男鹿君は友達だもん、と、東条先輩は面識ないけどうちの生徒、だもん、だから手出しちゃ駄目」
彼は出馬要
出馬八神流十六代目当主で幼い頃から何度か面識がある人物。
「石矢魔の名簿にお嬢と同じ名前がおりましたからまさかとは思いましたわ」
「要くんがこっちにいるとは知らなかったし…って、そんなのはどうでもいいの」
要くんの殺気が完全におさまったのを確認してみんなを見やる。
夏目先輩は、無傷。東条先輩もケロッとしてる。邦枝先輩も、大丈夫。
男鹿君は、怪我してる
「う、うう…」
「お嬢?」
「馬鹿ぁ」
ぶわっと涙が溢れ出す
もう、馬鹿、みんな馬鹿
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