夏休み。

特に帰省の予定もなかった私は神崎先輩のご家族に挨拶したり(勿論強制的にだ)男鹿君達と遊んだりベル君が行方不明になったりそれなりにバタバタとしつつも充実した生活を送っていた。
因みに石矢魔に夏休みの宿題というものは存在しない。用意するだけ時間と労力の無駄になるからだ。

そして夏休みが終盤にかかった今日。ベル君が無事見つかったという報告と同時に聞かされたのは学校が倒壊した、という信じられない知らせ。

そして


「…私、昨日神崎先輩が退院したって聞いたんですけど」

「うん。昨日一旦退院したねー」


神崎先輩と城山先輩がまた入院した、という連絡。
夏目先輩から電話が来て言われるがまま外に出た瞬間に拉致られるというドッキリが私を朝から待っていたのだけどなんていうかもう朝から色々驚きすぎて何が何だかわからない。

朝起きたら男鹿君からベル君が見つかったという旨のメールがあって胸を撫で下ろしたら古市君から学校が倒壊したってメールも入ってるしまさかと思って慌ててテレビを付けたら本当に瓦礫の山になってるってニュースでやってるし。それを見て呆然としてたら夏目先輩からの電話からの拉致。

ニコニコ笑って歩きながら私の手首を掴んだまま離してくれない夏目先輩に泣いた。本当に泣いた。

そして訳が分からぬまま病院に連れてこられそこでやっと二人の入院を知らされたのだ。


「かーんざき君」


ガラッとドアを開け病室の入り口で語尾に音符が付きそうな口調で神崎先輩を呼ぶ夏目先輩。

…なんか、今更だけど、なんで神崎先輩や城山先輩が入院して二人と一緒にいた夏目先輩は無事なんだろう。
絆創膏だけって…

夏目先輩という人物は普段にこにこしてて、楽しいことが好き。だから神崎先輩といると聞いた。

喧嘩は多分凄く強い。
いつも飄々としてて、たまに目が笑ってなくて。あとたまに怖くなる。
一番質が悪いけど私に優しくしてくれてるし、それで十分。腹の中で何考えてたって表面上だけでも優しいなら別に。

こういうところ、純粋な堅気じゃないと我ながら思う。


「東海林ちゃん?」

病室の前で黙り込む私を病室の中からひょこっと顔を出しながら呼ぶ夏目先輩。


「あの、先輩」

「ん?」

「後ろに隠れてていいですか…」


し、知らない人の声がするんですが…
半泣きでそう告げる私に夏目先輩はにっこり笑って「どーしようかな」なんて意地悪を言う。


…やっぱり優しくないかもしれない



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