ヨーグルッチを購入しついできいくつかお菓子も買って神崎先輩の病室をそっと廊下から覗く。よ、よかった姫川先輩はいない。

ほっと胸をなで下ろしてから恐る恐る病室のドアを開けた。


「し、失礼します…」

「ヨーグルッチ寄越せ」

「い、いきなり…」


目があった瞬間それってないと思う。
そんなことを思いつつも大人しく買ってきたヨーグルッチを献上する。ちなみに10パック買ってきた。


「病院の自販機にねぇんだよ」

「あー…。最近ある場所減ってきましたよね」


って、普通に話している場合じゃなくて、


「あ、あの」

「あ?」

「すみませんでした、この間…はげろとか…」

「おー、随分な言い草だったじゃねぇか」


うああああやっぱり怒ってる!い、いや、当たり前だけど!


「あう…ね、熱があると、こう、パニクりやすくなったり、で、その……ごめんなさい」

「熱あったのかよ」

「帰って計ったら39℃ありました…」


ヨーグルッチ片手に(もう飲んでる…)心底呆れたような顔をする神崎先輩に体を縮めこませる。


「あとさっきも…あ、ありがとうございました…夏目先輩達に、連絡」

「おー、もっと崇めろ」

「…はげればいいのに」

「あ゛ぁ?テメェは自分の夫にハゲられてぇのか」

「う、嘘ですよ…夫がハゲてるとか勘弁です…」


って、


「「夫?」」


二人顔を見合わせて綺麗にハモる。


「夫、って…」

「う、うるせえ!」

「うるせえって!」

「間違えじゃねえだろ!」

「そ、そうですけど!」


は、恥ずかしい…
そうだよね、許嫁ということは将来的にはそうなるわけで、


「あう…」


それを神崎先輩に言われると思ってなかったから余計恥ずかしいんだ。
診察室にあるようなくるくる回る椅子の上で三角座りをして両手で頬を抑える。

あ、暑い。


「…ちんちくりんな妻でごめんなさい」

「げ」

「どーせ手を出すのは趣味の悪いゲテモノ好きですよ」


くるくると回りながらわざと拗ねたような口調でこの間の暴言についてチクチクと責めてみる。我ながらかわいげのない照れ隠しだ。


「そこまで言ってねーだろ」

「そりゃ身長は人よりほんの少し小さいし」

「ほんの少しか?」

「う、うう…間違ってもスタイルよくはないけど…」


なんか言ってる間に本当に悲しくなってきた。


「…ちんちくりんだけど胸はあるもん」

「はぁ!?」


あ。し、失言…。

膝に埋めていた顔を恐る恐るあげるとやや赤い顔をした神崎先輩。
どうやらイメージとは違い女慣れはしていないらしい。夏目先輩ならサラリと流しそうなものなのに。ちなみに古市君には「ロリ巨乳…!」と言われたことがある。彼はなかなかの変態だ。


「あ、あの、」

「……確かに胸はあるな」

「うわああああ!忘れて下さい!もうちんちくりんでいいです!」

「病院で騒ぐなや」

「せ、先輩に言われたらおしまいだ…」


いつも姫川先輩と喧嘩して怒られてるくせに…夏目先輩に聞いたんだからな。


「…何食べたらそんなに大きくなるんですか?」

「城山に聞け」

「ううう…」



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