先日のお見舞い騒動の翌日、私は学校を休んだ。
いつもよりパニクったとかいつもより口が滑りやすかったとか、あの日のことを考えると泣きたくなるが全ては熱のせいだったらしい。
病院から帰った時点で38℃以上の熱があったのだから気付かなかった方が不思議だ。

それから数日間学校を休み久々の登校。

朝早くに登校して小部屋に引きこもってるからあまりわからないけど列怒帝瑠のみなさんが帰ってきて学校に女の子がいっぱい!と古市君からのメール通り何人かの女子の姿を見かけ、なんとなく新鮮に感じた。

そんな列怒帝瑠の頭である邦枝先輩と男鹿君が一騒動あったらしいけど…私には関係ない話だ。


「東海林ちゃん」


コンコン、と言うノックの音とここ数週間ですっかり聞き慣れた声に少し躊躇ってからドアを開ければ現れる夏目先輩と城山先輩。


「お、お久しぶりです…」


この間の失態を見られているという羞恥心から居留守を使いたくなってしまったのは内緒の話だ。

慣れた手付きお茶を煎れて二人の前に置く。ついでにこの間校長先生に貰ったお茶菓子も。


「この間はみっともないところを…」

「あはは、元に戻ってる」

「うう…熱が出るといろいろ弛むんです…」


口とか、涙腺とか。
恥ずかしくて死にたいくらいだ。


「熱はもういいのか」

「はい、もうすっかり」


そうか、と微笑む城山先輩。うう、大好きだ。


「それより、姫ちゃんの肩外したって本当?」

「え、あ…きょ、恐怖のあまりついうっかり…」

「つい、うっかり…」

「肩をねぇ」


普通じゃないですよねごめんなさいでも本当なんですだって昔から襲われたらそうするようにって…!
必死に言い訳する私を楽しそうに眺める夏目先輩。何がそんなに楽しいんだろうか。


「神崎君と知り合いで、姫ちゃんとやり合って、男鹿ちゃんと友人か」


整理されるととんでもないな。
ああ、平穏に暮らしたかっただけなのにどこからおかしくなっちゃったんだろう。神崎先輩とお見合いしてから?ううん、この学校に通うことになったから…って、神崎先輩のせいじゃん結局。うう…。


「じゃ、元気なのも確認したし俺達戻るよ」

「あ、はい」


二人が立ち去った後は勉強を再開。この時間が一番落ち着ける。




どれくらい経っただろうか。
ふと部屋の外が騒がしいことに気付いた。


「あ?なんか扉あるぜ」

「まじー?何かの部屋とか?」

「チッ、鍵が掛かってやがる」


ガチャガチャとドアノブが回される音がする。
や、やばい!
慌てて荷物を纏め外へつながるドアから外に出る。
このままじゃ危ない…図書館へ行こう、かな。でもドア蹴破られて中をぐちゃぐちゃにされたら…


「だ、誰か呼んでこよう」


夏目先輩達は三年の教室にいるだろうけどあそこは無法地帯だからそこまで行くのは危ない。
なら、男鹿君?男鹿君っていつもどこに?ああああ知らない!どうしよ…って、そうだ、携帯!

震える手で着信履歴の一番上にある番号に電話を掛ける


『あ゛?』

「うわああ神崎先輩!?間違えましたすみません!」


ブツっときってからヤバいと気が付いたけど取りあえずそれどころではない。
ガンガンとドアを蹴る音が中から聞こえてくるからだ。

今度はちゃんと番号を確認してから発信ボタンを連打する。



『もしもし?』
「ふ、古市君どうしよう!」

『え?』

「い、いつもいる部屋、入り口、蹴破られ…!」

『おい男鹿!なんかよくわかんないけど保健室行くぞ!』


古市君のその言葉を最後に電話がきれる。
きっと来てくれると信じてドアの影で膝を抱え小さく固まる。


「お?なんかすげー良くねこの部屋」

「ケトルとかあるぜ」

「マジかよ!」


遂に侵入を許してしまったらしく部屋からは数人の話し声が聞こえて…本当にどうしよう

そう泣きそうになった次の瞬間


ガッ!


男のうめき声と大きな物音が聞こえびくりと体を震わせる


「なーにしてんの?こんなトコで」

「な、夏目!?」



「(え、夏目先輩…?)」


聞こえた名前にドアをうっすらと開け中を覗く。


「あ、東海林ちゃん発見」

「大丈夫か?」


視界に飛び込んできたのは逃げ出す男子生徒達とよく知った二人の姿。


「な、夏目先輩、城山先輩ぃ」


半泣きになる私の両脇に手を入れ立ち上がらせてくる城山先輩。なんで二人がここに…?



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